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千葉地方裁判所 平成元年(行ウ)13号 判決

平成元年(行ウ)第13号(A事件)・平成2年(行ウ)第17号(B事件)・平成3年(行ウ)第30号(C事件)・平成4年(行ウ)第30号(D事件)・平成5年(行ウ)第23号(E事件)・平6年(行ウ)第29号(F事件)・平成七年(行ウ)第三二号(G事件) 工作物使用禁止命令取消等請求事件

主文

一  被告は、原告三里塚芝山連合空港反対同盟に対し、金八〇万円及び内金二〇万円については平成四年九月一八日から、内金二〇万円については平成五年九月一七日から、内金二〇万円については平成六年九月一六日から、内金二〇万円については平成七年九月一四日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告P1、原告P2、原告P3、原告P4、原告P5及び原告P6に対し、原告一人につき金四〇万円宛及び内金一〇万円については平成四年九月一八日から、内金一〇万円については平成五年九月一七日から、内金一〇万円については平成六年九月一六日から、内金一〇万円については平成七年九月一四日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告P7及び原告P8に対し、原告一人につき金一〇万円宛及びこれに対する平成四年九月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告三里塚芝山連合空港反対同盟、原告P1、原告P2、原告P7、原告P3、原告P4、原告P8、原告P5及び原告P6のその余の請求をいずれも棄却する。

五  原告P9及び原告P10の請求をいずれも棄却する。

六  訴訟費用は、原告三里塚芝山連合空港反対同盟、原告P1、原告P2、原告P3、原告P4、原告P5及び原告P6と被告との間で生じた分は、これを二分し、その一を被告の負担とし、その余を右原告ら七名の負担とし、原告P7及び原告P8との間で生じた分は、これを五分し、その一を被告の負担とし、その余を右原告両名の負担とし、原告P9及び原告P10と被告との間に生じた分は、これをすべて右原告両名の負担とする。

事実及び理由

第一請求

(A事件)

被告は、A事件原告らに対し、各五〇万円宛及びこれに対する平成元年九月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(B事件)

被告は、B事件原告らに対し、各五〇万円宛及びこれに対する平成二年八月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(C事件)

被告は、C事件原告らに対し、各五〇万円宛及びこれに対する平成三年九月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(D事件)

被告は、D事件原告らに対し、各五〇万円宛及びこれに対する平成四年九月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(E事件)

被告は、E事件原告らに対し、各五〇万円宛及びこれに対する平成五年九月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(F事件)

被告は、F事件原告らに対し、各五〇万円宛及びこれに対する平成六年九月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(G事件)

被告は、G事件原告らに対し、各五〇万円宛及びこれに対する平成七年九月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、別紙物件目録記載の各工作物を所有ないし占有、管理していた原告らが、平成元年から平成七年までの七回にわたり、運輸大臣から、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法三条一項一号に基づく右工作物の使用禁止命令を受けたことについて、同法が憲法に違反すること、右各処分の原告らに対する適用が憲法に違反すること、右各処分が法律上の要件を欠く違法なものであることなどを主張して、国家賠償法一条一項に基づき、右違法な処分により被った精神的苦痛に対する慰藉料の支払を求めた事案である。

一  前提となる事実(乙一八八及び弁論の全趣旨。3は当事者間に争いがない。)

1  原告ら

原告三里塚芝山連合空港反対同盟(以下「原告反対同盟」という。)は、新東京国際空港(以下「新空港」ともいう。)の建設について反対運動を行っている法人格なき社団であり、他の原告らは、おおむねそれぞれが原告となる処分の期間(後記3)に対応する期間、別紙物件目録記載の各工作物(以下、これらを総称して「本件各工作物」という。)に常駐し、又はこれらを管理していた者である。

2  本件各工作物

本件各工作物は、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五三年法律第四二号、以下「本法」という。なお、同法は、昭和五九年法律第八七号、昭和六二年法律第五二号、平成五年法律第八九号及び平成七年法律第九一号による各改正が行われているが、各改正箇所は、本件における争点と直接関係がないので、以下においては、後記本件各処分が決定された当時が施行されていた同法がいずれのものであるかの摘示は省略する。)二条三項の規制区域内に所在する工作物である。なお、別紙物件目録一1記載の工作物は、平成元年一〇月二二日、火災により焼失し、その後に同目録一2記載の工作物が築造された。

3  本件各処分

運輸大臣は、原告らに対し、本法三条一項一号に基づき、本件各工作物に対し、以下の期間、本件各工作物の使用禁止命令を発出した(以下「本件各処分」という。)。

(一) 平成元年九月一九日付け使用禁止命令

期間  同日から平成二年九月一八日まで

物件  別紙物件目録一1、二ないし四の工作物

物件所有者  原告反対同盟

物件の管理者兼占有者

① 別紙物件目録一1の工作物につき、原告P1、原告P2、原告P7、原告P9

② 同目録二の工作物につき、内原告P10、原告P3、原告P4

③ 同目録三の工作物につき、原告P8、原告P5

④ 同目録四の工作物につき、原告P6

(二) 平成二年八月二八日付け使用禁止命令

期間  同年九月一九日から平成三年九月一八日まで

物件  別紙物件目録一2、二ないし四記載の工作物

物件所有者  原告反対同盟

物件の管理者兼占有者

① 別紙物件目録一2の工作物につき、原告P1、原告P2、原告P7、原告P9

② 同目録二の工作物につき、原告P10、原告P3、原告P4

③ 同目録三の工作物につき、原告P8、原告P5

④ 同目録四の工作物につき、原告P6

(三) 平成三年九月一八日付け使用禁止命令

期間  同年九月一九日から平成四年九月一八日まで

物件  前記(二)に同じ

物件所有者  原告反対同盟

物件の管理者兼占有者

① 別紙物件目録一2の工作物につき、原告P1、原告P2、原告P7、原告P9

② 同目録二の工作物につき、原告P10、原告P3、原告P4

③ 同目録三の工作物につき、原告P8、原告P5

④ 同目録四の工作物につき、原告P6

(四) 平成四年九月一八日付け使用禁止命令

期間  同年九月一九日から平成五年九月一八日

物件  前記(二)に同じ

物件所有者  原告反対同盟

物件の管理者兼占有者

① 別紙物件目録一2の工作物につき、原告P1、原告P2、原告P7

② 同目録二の工作物につき、原告P3、原告P4

③ 同目録三の工作物につき、原告P8、原告P5

④ 同目録四の工作物につき、原告P6

(五) 平成五年九月一七日付け使用禁止命令

期間  同年九月一九日から平成六年九月一八日まで

物件  前記(二)に同じ

物件所有者  原告反対同盟

物件の管理者兼占有者

① 別紙物件目録一2の工作物につき、原告P1、原告P2

② 同目録二の工作物につき、原告P3、原告P4

③ 同目録三の工作物につき、原告P5

④ 同目録四の工作物につき、原告P6

(六) 平成六年九月一六日付け使用禁止命令

期間  同年九月一九日から平成七年九月一八日まで

物件  前記(二)に同じ

物件所有者  原告反対同盟

物件の管理者兼占有者

① 別紙物件目録一2の工作物につき、原告P1、原告P2

② 同目録二の工作物につき、原告P3、原告P4

③ 同目録三の工作物につき、原告P5

④ 同目録四の工作物につき、原告P6

(七) 平成七年九月一四日付け使用禁止命令

期間  同年九月一九日から平成八年九月一八日まで

物件  前記(二)に同じ

物件所有者  原告反対同盟

物件の管理者兼占有者

① 別紙物件目録一2の工作物につき、原告P1、原告P2

② 同目録二の工作物につき、原告P3、原告P4

③ 同目録三の工作物につき、原告P5

④ 同目録四の工作物につき、原告P6

二  原告らの主張

1  本法の違憲性(法令違憲)

本法は、法制定の経緯、態様に照らして拙速を免れず、法全体として違憲無効である。

また、本件各処分の根拠となった同法三条一項は、以下に述べるとおり、憲法二一条一項、二二条一項、二九条一、二項、三一条、三五条にそれぞれ違反するものであり、このように憲法に違反する本法を根拠とする本件各処分も違憲、違法なものである。

(一) 憲法二一条一項違反

本法三条一項は、その一号において、当該建築物が「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供され、又は供されるおそれがあると認められることを、その使用禁止命令発動の要件としている。このように「集合」を要件としていることは、単に建築物の効用や価値の具体化としての使用収益権の侵害を超えて、憲法二一条一項に定める集会の自由の保障に反するものである。

また、平和的なデモ行進などの表現の自由は、国民が民主主義のルールに従って活動する際の最も重要な権利であり、憲法上、優越的地位を与えられていると解すべきであるから、表現活動を規制する立法の違憲審査基準は、合理性の基準、すなわち、規制目的が一応正当であり、規制手段が合理的関連性を有していれば、その規制は合憲とされる基準によるべきではなく、厳格な違憲審査基準によらなければならないと解される。

しかるに、本法は、憲法二一条二項の事前抑制の禁止に違反するものである上、表現の自由に対する過度に広範な制限であるから、全体として違憲である。また、本法三条一項は、より制限的でない他の選び得る手段、すなわち、立法目的を達成するため、規制の程度のより少ない手段が存在するかどうかを具体的・実質的に審査し、それがあり得ると解される場合には、当該規制立法を違憲とする基準や、明白かつ現在の危険、すなわち、①ある表現行為が、近い将来、ある実質的害悪を引き起こす蓋然性が明白であること、②その実質的害悪が極めて重大であり、その重大な害悪の発生が時間的に切迫していること、③当該規制手段が右害悪を避けるのに必要不可欠であること、の三要件の存在が論証された場合に初めて、当該表現行為を規制することができるとする基準に照らしても違憲である。

なお、仮に、本法を合理性の基準によって判断したとしても、その立法目的に正当性、合理性はないから、本法は違憲である。

(二) 憲法二二条一項違反

本法三条一項一号は、「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」と定め、同項三号は、「暴力主義的破壊活動者による妨害の用」と定める。これらは、現に居住している者の居住をも制限する適用を可能にするものであり、憲法二二条一項で定める居住の自由を侵すものである。

(三) 憲法二九条一、二項違反

憲法二九条一項は、「財産権はこれを侵してはならない。」と規定し、同条二項は、「財産権の内容は公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定し、財産権を制限するためには、公共の福祉の要請と法律による定めの二つの条件の存在を要求している。

本法三条一項は、所有者の物件の使用を制限するものであり、また、同法三条六項及び八項は、運輸大臣が工作物の除去、封鎖等の措置を採り得ることを定めており、いずれも財産権の制限を規定の内容としているが、その制限の理由には何ら合理性がなく、制限を正当化するための公共の福祉の要請は存しないものである。

また、同法は、「暴力主義的破壊活動(者)」(三条一項一号ないし三号)、「妨害の用」(同項三号)、「供されるおそれ」(同項本文)といった不明確な要件の認定を運輸大臣に包括的に委任するもので、法律による定めとはいえない。

したがって、本法三条一項は、憲法二九条一、二項に違反するものである。

(四) 憲法三一条違反

(1) 憲法三一条の適正手続の保証は、刑事手続に限らず、行政手続にも要請されるというべきである。

本法は、工作物の所有者等に対し、供用禁止命令を発し(三条一項)、その建反に対し刑事罰を科し(九条一項)、また、工作物の封鎖、除去の処分をも定めている(三条六、八項)。しかるに、本法は、これらの財産権等の基本的人権に対する侵害処分について、工作物の所有者、管理者、占有者に対して告知、弁解、防御の機会を与える規定を欠くものであり、適正手続の保障がなく、憲法三一条に違反する。

(2) また、憲法上優越的地位が与えられている精神的自由を制約する法律は、行政権に不当な裁量の余地を与える危険のない明確な基準と構成要件を具有すべきである(明確性の原則)。そして、仮に、法律がその明確性を欠く場合、限定的解釈により合憲として救済することは許されず、当該法律は文面上無効とされるべきである(漠然性の故に無効の理論)。なぜなら、人権を規制する法律の内容が漠然として不明確であれば、規制を受ける側は、何が許され、何が許されないかの判断が著しく困難となり、結果として、その制裁をおそれ、本来憲法上当然許される活動すら抑制されるおそれがあり、各種の自由権行使の萎縮的効果をもたらすからである。憲法三一条は、人権規制立法の明確性の原則を要請しているものといえる。

しかるに、①本法二条一項は、「暴力主義的破壊活動等」の意義について、「新東京国際空港若しくは新東京国際空港における航空機の離陸若しくは着陸の安全を確保するために必要な航空保安施設若しくは新東京国際空港の機能を確保するために必要な施設のうち政令で定めるものの設置若しくは管理を阻害し、又は新東京国際空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する次の各号に掲げる行為の一をすることをいう。」と定義しているところ、その行為対象は極めて無限定であり、法文言上はその拡張解釈を何ら阻止し得ないこと、②本法二条二項は、「暴力主義的破壊活動者」の意義について、「暴力主義的破壊活動等を行い、又は行うおそれがあると認められる者をいう。」と定義しているところ、「暴力主義的破壊活動等」の意義が不明確であることは前記(三)のとおりであるのみならず、右の「おそれ」なる文言は極めて不明確であり、多大な拡張の余地を与えるものであること、③本法三条一項は、「運輸大臣は、規制区域内に所在する建築物その他の工作物について、その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるときは、当該工作物の所有者、管理者又は占有者に対して、期限を付して、当該工作物をその用に供することを禁止することを命ずることができる。」と規定しているところ、「供されるおそれ」という文言は、抽象的、形式的であって、実質的には行政庁に対し無限定に判断権を与えているものであり、「期限を付して」という文言には、客観的な長さの限界はなく、何ら基本的人権の制限に歯止めを加える作用を有し得ず、「その用に供することを禁止する」との文言については、同項各号の用に供することを禁止する趣旨であるか、それとも、当該工作物の一般的使用を広く禁止する趣旨であるかが判然とせず、拡張解釈の危険性を有するものであること、④本法三条一項各号についても、「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」(一号)の「多数」がどの程度の人数を意味するのかにつき客観的基準は存しないし、「暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎びん等の物の製造又は保管場所の用」(二号)においても「おそれ」なる文言が使用され、それこそビールびん一本すら右に該当すると判断されることが考えられるのであり、極めて無限定であるし、また、「新東京国際空港又はその周辺における航空機の運航に対する暴力主義的破壊活動者による妨害の用」(三号)の文言は不明確であり、無限定に拡張される余地を有することなど、本法は、不明確、無限定な文言から成り立ち、構成要件が曖昧なものであり、一切の解釈を行政権にゆだねるとともに、憲法に規定する各基本的人権の全面的制限をも可能としているものであるから、その文言の漠然性の故に無効とされるべきである。

(3) 右(2)に述べたところからすれば、本法三条一項に基づく使用禁止命令は、運輸大臣の認定基準が著しく恣意的、一般的であって、明確性を欠き、行政権に多大な濫用の可能性を与えているものであるから、この点からも憲法三一条に違反する。

(五) 憲法三五条違反

憲法三五条は、住居の不可侵と、捜索、押収に対する保障を定めるが、同条も、刑事手続に限らず、行政手続に適用されると解すべきである。

しかるに、本法三条一項の使用禁止命令は、同条三項の建築物への立入りの規定と相まって住居の不可侵の原則を侵し、令状によらない捜索を許すもので、いずれも憲法三五条に違反する。

2  本件各処分の違憲性(適用違憲)

(一) 本法は、前記1のとおり憲法に違反し無効であるというべきであるが、仮に、本法につき、可能な限り合憲的限定解釈を施すことによって、本法自体の違憲無効を免れたとしても、右合憲的な限定解釈をすれば、適用されるべき建築物の範囲は、本法一条の立法目的達成のため、必要最小限の範囲に限定されるべきところ、少なくとも、本件各工作物については、本法三条一項各号の要件を何ら具備していないから、本法を適用すべき建築物でないことは明白である。

したがって、本件各工作物に対する同法の適用は、原告らの集会及びその他の表現活動の自由、居住の自由、財産権、適正手続の保障、住居の不可侵等の基本的人権を著しく侵害する違憲なものであり、それゆえ、同法を適用してなした本件各処分はいずれも違憲ないし違法であるといわねばならない。

(二) 仮に本件各処分のような行政処分において、法令により告知、弁解、防御の機会を与えなくてもよい場合があり得るとしても、当該処分をなすについて「高度かつ緊急の必要性」がない場合にまで告知、弁解、防御の機会を与えないことは違憲であるというべきである。

本件各工作物に対する使用禁止命令は、平成元年から平成七年までの毎年なされているところ、少なくとも平成二年以降の使用禁止命令を発するに当たり「高度かつ緊急の必要性」がなかったことは明らかであり、平成二年以降の使用禁止命令を発するに当たって、告知、弁解、防御の機会を与えなかった運輸大臣の処分は憲法三一条に反している。

3  本件各処分についての法定要件の欠缺

(一) 暴力主義的破壊活動等の不存在

本法二条一項では、「暴力主義的破壊活動等」とは、「新東京国際空港における航空機の離陸著しくは着陸の安全を確保するために必要な航空保安施設若しくは新東京国際空港の機能を確保するために必要な施設のうち政令で定めるものの設置若しくは管理を阻害し、又は新東京国際空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する次の各号に掲げる行為の一をすることをいう。」とされているところ、「新東京国際空港」の範囲は、航空法四〇条の規定に基づく告示(昭和四二年一月三〇日運輸省告示三〇号)により定められているが、新東京国際空港における航空機の離陸若しくは着陸の安全を確保するために必要な航空保安施設(以下「航空保安施設」という。)若しくは新東京国際空港の機能を確保するために必要な施設(以下「機能確保施設」という。)についても、条文の解釈からして、当然に具体的な政令の定めが必要なところ、これについて定めた政令は今日まで制定されていない。

したがって、現時点では、航空保安施設や機能確保施設については、「暴力主義的破壊活動等」の対象が未だ存在せず、その対象となるのは、右の告示区域内の施設のみであるが、被告が、本法の暴力主義的破壊活動等に該当すると主張する行為は、その大部分が同区域外の施設を対象とするものであり、右の意味での暴力主義的破壊活動等に該当しないから、これらの行為をもって暴力主義的破壊活動に該当するとした本件各処分は、本法の解釈を誤ってなされたものであり、法定の要件を欠く違法な処分といわなければならない。

(二) 暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれの不存在

本法における使用禁止命令は、具体的、客観的に、過去において暴力主義的破壊活動をした者らが、本件各工作物を拠点として、同所を暴力主義的破壊活動に関連した集合に供していたことがある場合で、かつ、現在もなお差し迫った明白な危険があるときに初めて認められるべきである。

ところで、被告が主張する、本件各工作物に居住し、かつ原告らに関係する第四インターナショナル日本支部(以下「第四インター」という。)、プロレタリア青年同盟(以下「プロ青同」という。)、統一共産同盟(以下「統一共産同」という。)などの各党派(以下、これらの政治的な集団・党派や、それを構成する構成員の全体を総称して「セクト」という。)が過去に行ったとされる暴力主義的破壊活動なるものは、統一共産同については、空港と無関係の成田用水事業に関連する公務執行妨害、芝山町議会における公務執行妨害のみしか掲げられておらず、前記(一)のとおり、本法にいう暴力主義的破壊活動に当たらないし、第四インターにしても、昭和六〇年ころを最後に本法にいう暴力主義的破壊活動に該当する活動はなく、同じくプロ青同も、その全国集会における検問時のトラブルによる公務執行妨害といった本法と無関係な事件を除けば、昭和六〇年ころまでしか本法にいう暴力主義的破壊活動と指摘される活動はなく、結局、本件各処分時において、本件各工作物が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれを認めるに足りる事由は一切存在していない。

また、原告反対同盟は、かつては自衛的手段として採用してきた闘争活動についても、新空港の開港後は方針として一切採用せず、その方針と異なる活動をする団体に対しては、その都度、明確に支援の関係を絶ってきたのであり、具体的には、昭和五八年以降、P28派支援セクトと行動を共にした事実はないし、被告がP29派支援セクトと主張する戦旗・共産主義者同盟(以下「戦旗荒派」という。)についても、平成元年に絶縁して以来関わりはない。

さらに、被告の指摘するところの暴力主義的破壊活動の意思の表明なるものは、実際には単なる政治的活動に関する意見表明にすぎず、それらが思想、政治的信条、主張の表明として、象徴的あるいは誇張的な表現が使用されることはむしろ常態であり、そのことをもって暴力主義的破壊活動の意思の表明などとは到底いえない。

このように、原告反対同盟は、平和的かつ建設的な活動を行ってきた結果、本件各工作物においては無論のこと、それ以外の場においても、原告反対同盟を支援するセクトが本法にいう暴力主義的破壊活動を行った事実はないのであり、実際に長年にわたり、本件各工作物は居住者である原告らの平穏な生活の場や援農に来る者の宿泊の場などに使用されているにすぎないのであるから、本件各工作物について、暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれはない。

以上のとおり、本件各処分当時、本件各工作物について、具体的、客観的にみて、過去に、暴力主義的破壊活動を行った者らが、本件各工作物を拠点として、同所を暴力主義的破壊活動に関連した集合に供していたことはなく、あるいはその差し迫った明白な危険があったとも認められないから、本件各工作物は同法三条一項一号の要件を具備しておらず、同法を適用すべき建築物には当たらない。

4  慰藉料

原告らは、本件各工作物を平穏に居住、宿泊等に利用し、かつ、通常の集会などの場に使用していただけであるにもかかわらず、本件各工作物に対し、全くいわれのない使用禁止命令が発せられたものであり、本件各処分は、原告らに対し、精神的な損害を与えるものである。

被告は、右使用禁止命令は、暴力主義的破壊活動者の集合の用に供することを禁止するもので、平穏な使用は禁止されないから原告に損害は発生しないと主張するが、正当な根拠のない本件各処分を受けること自体により、被処分者が精神的苦痛を被ることは明らかであるし、原告らは、本件各処分を受けることにより、対外的に、暴力主義的破壊活動者とのレッテルを貼られ、平和的な集会等により本件各工作物を利用する場合ですら過激派の出入りがあるとして扱われたり、単なる政治的意見の表明も暴力主義的破壊活動の意思の表明と判断されるなどの不利益を被っている。

また、原告らの本件各工作物の使用実態に全く変化がないのに、平成元年から平成七年までは本件各工作物に使用禁止命令が発せられ、それ以降は同命令が発せられないなどの被告の本法の恣意的運用の結果、原告らには、何が許される行為であり、何が許されない行為であるかの判断が著しく困難となり、このことが結果的には原告らの基本的人権である表現活動の自由に対し、著しい萎縮効果をもたらしているのであり、この点において、原告らは基本的人権を侵害されたことによる精神的損害を被っているのである。

このように、本法の適用の要件がないにもかかわらず、本件各工作物に対し使用禁止命令が毎年発せられたことによる原告らの精神的苦痛は甚大なものであり、本件各処分が原告らに対する不法行為に該当することは明白である。

原告らの右苦痛は、金銭に評価し難いほど甚大であるが、あえてこれを金銭に見積もると、本件各処分ごとに、原告ら一人当たり五〇万円を下らない。

三  被告の主張

1  本法の合憲性について

本法が、その制定の経緯等において違憲無効であるということはできないし、本法三条一項が憲法二一条一項、二二条一項、二九条一、二項、三一条、三五条に違反するということもできないことは、最高裁昭和六一年(行ツ)第一一号平成四年七月一日大法廷判決(民集四六巻五号四三七頁)の判示するところであるから、本法が違憲であるということはできない。

2  本件各処分の合憲性について

原告らは、高度かつ緊急の必要性がないにもかかわらず告知、弁解、防御の機会を与えずに工作物等の使用禁止命令を発するのは違憲になるとし、本件において、少なくとも平成二年以降の使用禁止命令を発するに当たっては、高度かつ緊急の必要性がなかったのにもかかわらず、右機会を与えなかったのであるから、被告の右各処分は憲法三一条に違反する旨主張する。

しかしながら、新空港は、平成八年現在において一日に三百数十回の航空機の離着陸があり、数万人の人間が行き来し、ひとたび過激派集団により右管制塔襲撃事件のような過激な暴力主義的破壊活動等が惹起されれば、直ちに多くの人命にかかわる極めて重大な事態に立ち至ることが明白であり、本件各処分が達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等は、新空港の設置、管埋等の安全という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からその確保が極めて強く要請され、高度かつ緊急の必要性を有するものであることは明らかであって、このこと自体は、新空港が供用されている限り、年度によって変化するものではなく、平成二年以降の各使用禁止命令の発出時においても何ら事情は変わらない。

しかも、昭和五三年三月二六日の第四インター、プロ青同及び戦旗荒派に所属する者らによる管制塔乱入事件はもとより、同年から昭和六三年に至る一〇年間においても原告らの所属する過激派集団の各セクトが暴力主義的破壊活動等を繰り返し行い、平成元年以降も、なおP28派を支援する各セクトや戦旗荒派は暴力主義的破壊活動等を繰り返していることに鑑みれば、立法時と同様、現在もなお使用禁止命令によって暴力主義的破壊活動等を防止し、新空港の設置若しくは管理等の安全を確保すべき高度かつ緊急の必要性が存することは明らかである。

3  本件各処分の要件充足性

(一) 「暴力主義的破壊活動者」の要件充足性の判断基準

本法三条一項一号の「暴力主義的破壊活動者」とは、暴力主義的破壊活動等を行い、又は行うおそれがあると認められる者をいう(本法二条二項)。

ところで、「暴力主義的破壊活動等」とは、新空港、航空保安施設若しくは機能確保施設のうち政令で定めるものの設置若しくは管理を阻害し、又は新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する本法二条一項各号に掲げる一定の行為をすることをいい(本法二条一項)、具体的には、新空港の設置又は管理を阻害する本法二条一項各号に該当する行為としての、①滑走路、エプロン、管制塔、ターミナルビル、空港管理ビル等の新空港告示区域(航空法四〇条)内の施設に対する右各号該当行為、②パイプライン施設、鉄道、道路等の輸送施設、上下水道施設、用水路等、新空港を設置若しくは管理する上で必要不可欠な施設及びこれらの施設の管理者、同職員等に対する右各号該当行為、③運輸省、新東京国際空港公団(以下「空港公団」という。)、千葉県及び警察機関等の施設並びにこれらの施設等の管理者、同職員等に対する右各号該当行為、④新空港及び新空港に密接に関連する施設の設置に関係する業務を行う建設会社等の施設及びこれらの施設等の管理者、同職員に対する右各号該当行為及び⑤新空港又はその周辺における航空機の航行を妨害する本法二条一項各号に該当する行為の五類型に分類することができる。

そして、暴力主義的破壊活動等を行う者とは、現に暴力主義的破壊活動等を行っている者をいい、暴力主義的破壊活動等を行うおそれのある者とは、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高い者をいうと解されるところ、ある者が暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高いか否かは、その者の平素の活動状況及び過去の活動状況等を総合的に判断して決定する必要があり、その際、①暴力主義的破壊活動等の検挙歴を有する者か否か、②暴力主義的破壊活動等の実行を主張し、これを行うセクトに所属する者か否か、③暴力主義的破壊活動等の実行を主張し、これを行うセクトに所属する者と行動を共にする者か否か、の三点を重視して右の蓋然性を判断すべきである。

(二) 「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれ」の要件充足性の判断基準

本法三条一項一号の定める「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供され、又は供されるおそれがあると認めるとき」とは、その工作物が集合の用に現に供され、又は供される蓋然性が高いと認めるときの意味に理解すべきであり、これを判断するに当たっては、当該工作物における集合の目的・内容等は直接問うところではなく、客観的に当該工作物が右集合の用に現に供され、又は供される蓋然性が高いと認められれば足りると解すべきである。

そして、運輸大臣は、本件各処分に当たって、当該集合と暴力主義的破壊活動等との関連性について以下の事情等を総合考量し、当該集合が暴力主義的破壊活動等に関連して行われたか否かを判断したものである。

① 本件各工作物が、その建設経緯、構造、外形からみて、日常生活を行うためのものとは通常認められず、暴力主義的破壊活動等を行う闘争の拠点たる性格を有するものであるか否か、また、その使用の態様が、実際に多数の暴力主義的破壊活動者が常駐ないし出入りし、暴力主義的破壊活動等を主張する集会への出発拠点や機関紙の発行拠点等として使用されているか否か

② 本件各工作物に出入りする者の所属セクトが、これまで暴力主義的破壊活動等を実行することを数多く主張し、また実際に暴力主義的破壊活動等を実行しているか否か

③ 本件各工作物に出入りする者の所属セクトが、その機関紙等において、当該工作物を暴力主義的破壊活動等の拠点(要塞化、砦化など)とする、使用禁止命令に反発して当該工作物を死守する等の挑戦的な意思を表明し、その具体化として工作物を要塞化したり、当該工作物への本法適用に反発して暴力主義的破壊活動等を行ったか否か

4  平成元年の使用禁止命令の要件充足性

(一) 暴力主義的破壊活動者の認定

(1) 本件各工作物には、後述のとおり、第四インター、戦旗荒派、プロ青同及び統一共産同の各過激派集団に所属する者が出入りしていた。

(2) これらの過激派集団は、過去において本法成立の契機となった昭和五三年三月二六日の管制塔襲撃事件等の暴力主義的な破壊活動を行ったほか、以下のような暴力主義的破壊活動等を多数回実行し、かつ、過激派集団の機関紙において、今後も同様の暴力主義的破壊活動等を継続する旨の意思を表明していた。

① 昭和五三年五月二〇日、新空港の旧第五ゲートに火炎車を突入させ、同ゲート付近で火炎びんを投てきしたこと(第四インター・プロ青同・戦旗荒派)

② 昭和五三年五月二〇日、千葉県香取郡αのα航空路監視レーダー基地を襲撃したこと(第四インター・プロ青同・戦旗荒派)

③ 昭和五六年一月一九日、千葉市βの航空燃料パイプライン工事第七立坑に侵入し、火炎びん十数本を投てきしたこと(第四インター)

④ 昭和五八年七月五日、千葉市の成田空港パイプライン第三管理棟に向けて火炎びんを投てきしたこと(戦旗荒派)

⑤ 昭和五九年二月一三日、千葉県成田市の新空港二期工区内にある成田空港警備会社のガードマン待機所用のキャンピングカーに時限発火装置を仕掛けて全焼させたこと(戦旗荒派)

⑥ 昭和五九年三月一七日、千葉県山武郡芝山町議会で新空港の二期工事促進決議を行う際、傍聴をめぐって混乱させたこと(第四インター・戦旗荒派・統一共産同)

⑦ 昭和六〇年九月二八日、空港公団工事局門扉に向けて火炎びんを投てきしたこと(プロ青同)

⑧ 昭和六〇年九月二九日、千葉県山武郡γのγアウターマーカーに火炎びんを投てきし、発火・炎上させたこと(プロ青同)

⑨ 昭和六〇年一一月二六日、成田用水μ工区の工事に反対する支援活動家二名が作業中のショベルカーに乗り込むなどしたこと(統一共産同)

⑩ 昭和六二年三月二日、成田用水に関する県営ほ場整備事業に反対し、高谷川改修工事現場高谷川河川内で警備に当たっていた警察官の職務を妨害したこと(戦旗荒派)

⑪ 昭和六二年三月六日、空港公団工事局に向けて飛翔物を発射したこと(戦旗荒派)

⑫ 昭和六二年四月一七日、成田用水μ工区の工事に反対し、櫓に上がり工事を妨害したこと(戦旗荒派・統一共産同)

⑬ 昭和六二年一〇月二九日、空港公団工事局に向けて時限式発射装置を使用し、飛翔物を発射させたこと(戦旗荒派)

⑭ 昭和六三年四月一三日、千葉県山武郡δ四一番の地点から空港公団工事局に向けて時限式発射装置を使用し、飛翔物を発射させ、給水タンクの給水管を破損させたこと(戦旗荒派)

⑮ 昭和六三年一一月六日、新空港周辺で原告反対同盟P29派の全国集会で検問中の警察官の職務を妨害したこと(プロ青同)

⑯ 平成元年二月二一日、千葉県成田市ε五八番一一の雑木林に時限式発射装置二基を設置し、新空港に向けて金属弾を発射しようとしたこと(戦旗荒派)

(3) そして、本件各工作物に出入りしていた過激派集団に所属する者は、その所属する過激派集団の思想主張に賛同し、その掲げる目標の実現に向けて活動していると認められ、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったことは明らかである。

(二) 別紙物件目録一1の工作物(以下「旧労農合宿所」という。)の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

旧労農合宿所の所在する土地は新空港の航空保安施設用地に当たり、昭和四八年四月まではP11が居住していたが、同人の移転後の昭和五二年四月二日、第一次団結小屋(通称「労農合宿所」)の建設が開始され、右作業には過激派集団である第四インター、プロ青同及び戦旗荒派の各セクトに所属する者らが中心となって連日従事して同年四月二八日におおむね完成し、同年五月五日には名称を「θ闘争連帯労農合宿所」とする旨決定され、同日から前記各セクトに所属する者らが起居するなとして常駐し、闘争拠点とするようになった。その後、昭和五四年八月、第二次団結小屋(通称「κ農業研修センター」)が、昭和五五年八月、第三次団結小屋(通称「図書館」)が、昭和六〇年九月、第四次団結小屋(通称「仮宿泊所」)が、いずれも前記各セクトに所属する者らが中心となって建設されたものである。

旧労農合宿所は、労農合宿所約一〇〇名、κ農業研修センター約一〇〇名、図書館約三〇名、仮宿泊所約八〇名と大規模な人員収容力を有し、入口に鉄門扉を設ける等、その構造及び外形は、通常の家屋とは著しく異なるものである。

旧労農合宿所には、平成元年七月現在、P1(第四インター)、P7(プロ青同)、P2(第四インター)の三名が常駐しており、昭和六二年四月四日から平成元年三月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター一一名、戦旗荒派一一名、プロ青同五名、統一共産同二名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計三六名の出入りが確認されているところ、このうち一六名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に同合宿所で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に一七回確認されている。また、同合宿所には、暴力主義的破壊活動等に該当する昭和五九年二月一三日の新空港警備員待機所に対する放火、昭和六〇年四月八日の空港公団工事局に対する火炎びん発射等の被疑事実に基づき昭和五九年から昭和六三年にかけて千葉県警察により計七回の捜索差押えがなされたが、その際、前記各セクトに所属する者ら計二五名がそこに在所していたことが確認されている。

(2) 旧労農合宿所に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況等

旧労農合宿所には前記(1)のとおり、第四インター、戦旗荒派、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトは、機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明しているほか、同合宿所に関連する暴力主義的破壊活動等の意思も表明しており、労農合宿所を含めた工作物全体を新空港の廃港に向けた実力闘争の砦としてこれを継続する旨の意思を表明していたものと認められる。

(3) 以上のように、旧労農合宿所は、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙、集会等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明しており、また現にこれを実行に移していること、③旧労農合宿所に関連する暴力主義的破壊活動等の意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、旧労農合宿所は多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性が高かったということができる。

(三) 別紙物件目録二の工作物(以下「インターκ団結小屋」という。)の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

インターκ団結小屋は、昭和四六年四月ころ、社会主義学生戦線(以下「フロント」という。)と称する団体が第一次団結小屋を建設し、昭和四七年一〇月下旬に過激派集団である第四インターに所属する者らが常駐し、闘争拠点とするようになり、小屋の名称も「κ学生インター団結小屋」と称するようになった。その後、昭和五二年七月には右団結小屋を解体し、その跡地に第二次団結小屋が建設されたが、右団結小屋も昭和五八年四月二六日から同月二八日にかけて解体され、同月二九日から同年五月一三日にかけて、現在の団結小屋(第三次)が建設された。その後、木製監視櫓が昭和六〇年一月に、鉄骨製監視櫓が昭和六二年一月にそれぞれ建設されたが、同年九月一日に木製櫓は撤去され、同月五日から同年一〇月三日にかけて、既設の鉄骨製櫓を吸収する形で高さ約三一メートルの鉄骨製櫓(中段に監視小屋付き)が建設された。なお、右団結小屋及び櫓の建設には、いずれも第四インターを中心とする過激派集団に属する者らが連日従事している。

インターκ団結小屋は、一階に一八畳間、二階に二四畳間が設けられており、大規模な人員収容力を有するとともに、中段に監視小屋付きの高さ約三一メートルの監視櫓が設置され、さらに「C滑走路実力阻止」の看板を掲げ、周囲に鉄板塀を巡らせる等、その購造及び外形は、通常の家屋とは著しく異なるものである。

インターκ団結小屋には、平成元年七月現在、P10、P3、P4のいずれも第四インターに所属する三名が常駐しており、昭和六二年五月九日から平成元年三月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター一三名、戦旗荒派四名、プロ青同三名、統一共産同一名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計二七名の出入りが確認されているところ、このうち一〇名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に二三回確認されている。また、インターκ団結小屋には、暴力主義的破壊活動等に該当する昭和五九年三月一七日芝山町議会二期工事促進決議に伴う公務執行妨害の被疑事実に基づくもののほか、昭和五九年から昭和六三年にかけて千葉県警察により計二回の捜索差押えがなされたが、その際、前記各セクトに所属する者ら計四名がそこに在所し、機関紙類が押収されている。

(2) インターκ団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況等

インターκ団結小屋には前記(1)のとおり、第四インター、戦旗荒派、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトは、機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明しているほか、同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思も表明しており、同団結小屋を含めた工作物全体を新空港の廃港に向けた実力闘争の砦としてこれを継続する旨の意思を表明していたものと認められる。

(3) 以上のように、インターκ団結小屋は、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙、集会等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明しており、また現にこれを実行に移していること、③インターκ団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、インターκ団結小屋は多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性が高かったものということができる。

(四) 別紙物件目録三の工作物(以下「プロ青同団結小屋」という。)の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

プロ青同団結小屋は、過激派集団であるプロ青同の闘争拠点として昭和五二年一〇月に旧館が、昭和五六年一二月に新館が、同年八月にトタンの外壁がそれぞれ建設されたものである。プロ青同団結小屋は、昭和五二年一〇月一日から同月二日にかけて旧館が、昭和五六年一一月一日から同年一二月一四日にかけて新館が、いずれも過激派集団であるプロ青同に所属する者らが中心となって従事して建設され、右旧館の完成以降、プロ青同に所属する者らが起居し、闘争拠点とするようになった。

プロ青同団結小屋は、旧館一階及び二階に一二畳間が計三つ、また、新館一階に三四畳間、同二階に三九畳間が設けられており、大規模な人員収容力を有するとともに、外周の一部に巡らされているトタン塀(昭和五六年八月設置)には、「空港を廃港へ包囲突入占拠で大勝利を プロレタリア青年同盟θを闘う青年先鋒隊」と大書されている等、その構造及び外形は、通常の家屋とは著しく異なるものである。

プロ青同団結小屋には、平成元年七月現在、P12、P8、西浦政弘、P13、P14のいずれもプロ青同に所属する五名が常駐しており、昭和六二年四月一一日から平成元年六月一一日までの間に右常駐者を含め、八名のプロ青同に所属する者及びこれらの者と行動を共にする者一名の計九名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に五回確認されている。また、プロ青同団結小屋には、昭和六三年一一月六日の新空港反対集会の無届けデモに伴う多衆行進又は集団運動に関する条例違反の被疑事実に基づき、平成元年に千葉県警察により捜索差押えがなされたが、その際、プロ青同に所属する者ら四名がそこに在所し、機関紙等が押収されている。

(2) プロ青同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況等

プロ青同団結小屋には前記(1)のとおり、プロ青同に所属する者らが出入りしているところ、右各セクトは、機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明しているほか、同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思も表明しており、同団結小屋を含めた工作物全体を新空港の廃港に向けた実力闘争の砦としてこれを継続する旨の意思を表明していたものと認められる。

(3) 以上のように、プロ青同団結小屋は、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙、集会等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明しており、また現にこれを実行に移していること、③プロ青同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、プロ青同団結小屋は多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性が高かったものということができる。

(五) 別紙物件目録四の工作物(以下「統一共産同団結小屋」という。)の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

統一共産同団結小屋は、昭和四六年八月一〇日に第一次団結小屋(木造平家建)が建設され、宇都宮大学全共闘に所属する者らが常駐していたが、昭和五一年八月に至り、統一共産同団結小屋前に「労活評」(統一共産同の大衆組織名)の看板が掲げられ、過激派集団である統一共産同に所属する者らが起居し、闘争拠点とするようになった。その後、昭和五二年三月一八日には統一共産同団結小屋が増築され、また、昭和五七年六月一八日から同年七月三日にかけて第二次団結小屋(鉄骨プレハブ二階建)が、平成元年一月二五日には孟宗竹製の見張り台(高さ約一二メートル)が、いずれも統一共産同に所属する者らが中心となって従事して建設された。

統一共産同団結小屋は、鉄骨プレハブ二階建に一二畳間が二つ設けられており、大規模な人員収容力を有するとともに、孟宗竹製の高さ約一二メートルの見張り台を設置し、さらに「成田用水粉砕!労闘・労活評 θスト実 統共同」の看板を掲げ、周囲に高さ約三ないし五メートルの竹塀を巡らせる等、その構造及び外形は、通常の家屋とは著しく異なるものである。

統一共産同団結小屋には、平成元年七月現在、P6、P15、P16のいずれも統一共産同に所属する三名が常駐しており、昭和六二年四月八日から平成元年六月一一日までの間に右常駐者を含め、統一共産同三名、プロ青同一名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計六名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に統一共産同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に八回確認されている。

ちなみに、統一共産同団結小屋の常駐者であるP16は、昭和六二年四月一七日、成田用水μ工区の工事に反対し、戦旗荒派に所属する者一〇名とともに作業区域内に構築した櫓に上り、排除活動に当たった警察官に対し暴行を加えたため、公務執行妨害の現行犯で逮捕されており、これは既に前記(一)⑫で言及したとおり、暴力主義的破壊活動等に該当する活動である。また、統一共産同団結小屋には、暴力主義的破壊活動等に該当する昭和五九年三月一七日芝山町議会二期工事促進決議に伴う公務執行妨害の被疑事実に基づき千葉県警察により捜索差押えがなされたが、その際、統一共産同に所属する者が立会人になるとともに、ビラが押収されている。

(2) 統一共産同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況等

統一共産同団結小屋には前記(1)のとおり、統一共産同及びプロ青同に所属する者らが出入りしているところ、右各セクトは、機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明しているほか、同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思も表明しており、同団結小屋を含めた工作物全体を新空港の廃港に向けた実力闘争の砦としてこれを継続する旨の意思を表明していたものと認められる。

(3) 以上のように、統一共産同団結小屋は、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属するセクトは、機関紙、集会等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明しており、また現にこれを実行に移していること、③統一共産同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、統一共産同団結小屋は、多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性が高かったということができる。

(六) 以上述べたとおりであるから、本件各工作物がいずれも本法三条一項一号の要件を充足していることは明らかであり、運輸大臣が新空港の安全確保のため、本件各工作物に平成元年の使用禁止命令を発出したことは合憲かつ適法なものである。

5  平成二年の使用禁止命令の要件充足性

(一) 暴力主義的破壊活動者の認定

(1) 本件各工作物には、後述のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各過激派集団に属する者が出入りしており、これらの過激派集団が過去において暴力主義的破壊活動等を行ったことについては前記4(一)のとおりである。

また、後述のとおり、平成元年度の使用禁止命令の発出後においても、右各過激派集団がこれまでの運動方針を否定し、実力闘争による新空港廃港に向けた活動を放棄する意思を表明するなどしたことはないし、むしろ、右過激派集団は、その機関紙において、従前同様の暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明していたと認められるのであるから、本件各工作物に出入りしていた過激派集団に所属する者は、その所属する過激派集団の思想主張に賛同し、その掲げる目標の実現に向けて活動していると認められ、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったことは明らかである。

(2) なお、平成元年の使用禁止命令が発出されて以降、平成二年の使用禁止命令が発出されるまでの間、右過激派集団自身による暴力主義的破壊活動等が行われた事実は存しないが、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性について判断するためには、右一年間の暴力主義的破壊活動等の実行状況のほか、使用禁止命令が発出されたことによる暴力主義的破壊活動等に対する防止効果をも考慮する必要がある。そして、当該過激派集団がこれまでの運動方針を否定し、実力闘争による新空港廃港に向けた活動を放棄する意思を表明したこと等により、同集団の過去の行動や意思表明を斟酌することが相当ではないと認められるような特段の事情が存する場合であれば格別、そのような事情が存しない場合は、右蓋然性を判断する上で、同過激派集団の過去における活動状況や意思表明状況等を斟酌することは当然である。

(二) 別紙物件目録一2の工作物(以下「新労農合宿所」という。)の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

旧労農合宿所の建設経緯については、前記4(二)(1)に述べたとおりであるが、旧労農合宿所は平成元年の使用禁止命令発出後の同年一〇月二二日午後三時ころ「仮宿泊所」から出火し、「労農合宿所」、「κ農業研修センター」と順次延焼、午後四時過ぎまでに右三棟が焼失した。このため、同年一〇月二三日午後から翌二四日末明にかけて、原告反対同盟のP29派及びこれを支援する過激派集団の各セクトに所属する者ら約五〇名により、焼け跡に別紙物件目録一2の工作物(新労農合宿所)を建設した。

再建された新労農合宿所は、面積約七六平方メートルと引き続き大規模な人員収容力を有するとともに、旧労農合宿所と同様、入口には鉄門扉が設けられている等、その構造及び外形は、通常の家屋とは箸しく異なるものである。

新労農合宿所には、平成二年八月現在、P1(第四インター)、P2(第四インター)、P9の三名が常駐しており、平成元年九月二〇日から平成二年六月二六日までの間に右常駐者を含め、第四インター八名、プロ青同四名、統一共産同二名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計二三名の出入りが確認されているところ、このうち七名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に同合宿所で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に二〇回確認されている。

(2) 新労農合宿所に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

新労農合宿所には前記(1)のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトはその機関紙において、いずれも暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明しているとともに、新労農合宿所に関連する暴力主義的破壊活動等の意思を表明している。

右のような意思表明状況に鑑みれば、右過激派集団が、これまでの新空港に対する攻撃の歴史を踏まえ、さらにその活動を強化していく意思を有していることは明らかであるというべきである。

(3) 以上のように、新労農合宿所は、平成元年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙、集会等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、③右使用禁止命令発出に反発し、これを粉砕する等、同合宿所に関連する暴力主義的破壊活動等の意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、新労農合宿所は多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性が高かったということができる。

(三) インターκ団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

インターκ団結小屋の建設経緯については、前記4(三)(1)に述べたとおりであるが、平成二年二月一二日には「二・一二κ団結小屋の封鎖・除去を許さない現地緊急行動」が行われ、その際、鉄骨製櫓に「大地とともに生きる」と大書した看板が掲げられた。

インターκ団結小屋の構造及び外形は、平成二年の使用禁止命令発出時においても前記4(三)(1)に述べた状態を維持しており、通常の家屋とは著しく異なるものである。

インターκ団結小屋には、平成二年八月現在、P10、P3、P4のいずれも第四インターに所属する三名が常駐しており、平成元年九月一九日から平成二年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター一八名、プロ青同五名、統一共産同二名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする考計一九名の出入りが確認されているところ、このうち五名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に五回確認されている。また、平成二年三月二五日には「三・二五全国集会」に先立ち、インターκ団結小屋敷地内において第四インターを中心とする過激派集団約二〇〇名が参加して「P17君を囲む会」が開催され、その際参加者らは、「二期工事を実力で阻止するぞ!」「成田治安法粉砕」等のシュプレヒコールを行った。

(2) インターκ団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

インターκ団結小屋には前記(1)のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明及び実行状況並びに同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思の表明状況については、前記4(三)(2)に述べたとおりである。

(3) 以上のように、インターκ団結小屋は、平成元年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙、集会等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、③右使用禁止命令発出に反発し、これを粉砕する等、同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、インターκ団結小屋は多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性が高かったということができる。

(四) プロ青同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

プロ青同団結小屋の建設経緯については、前記4(四)(1)に述べたとおりであり、その構造及び外形は、平成二年の使用禁止命令発出時においても前記4(四)(1)に述べた状態を維持しており、通常の家屋とは著しく異なるものである。

プロ青同団結小屋には、平成二年八月現在、P12、P8、西浦政弘、P13、P14、P7のいずれもプロ青同に所属する六名が常駐しているとみられ、平成元年九月二六日から平成二年六月三日までの間に右常駐者の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にプロ青同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に四回確認されている。

(2) プロ青同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

プロ青同団結小屋には前記(1)のとおり、プロ青同に所属する者らが出入りしているところ、右セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明及び実行状況並びに同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思の表明状況については、前記4(四)(2)において述べたとおりである。

(3) 以上のように、プロ青同団結小屋は、平成元年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属するセクトは、機関紙、集会等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、③右使用禁止命令発出に反発し、これを粉砕する等、同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、プロ青同団結小屋は多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性が高かったということができる。

(五) 統一共産同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

統一共産同団結小屋の建設経緯については、前記4(五)(1)に述べたとおりであり、その構造及び外形は、平成二年の使用禁止命令発出時においても前記4(五)(1)に述べた状態を維持しており、およそ通常の家屋とは著しく異なるものである。なお、平成元年の使用禁止命令発出以降に「成田治安法適用弾劾!」の看板が新たに掲げられている。

プロ青同団結小屋には、平成二年八月現在、P6、P15のいずれも統一共産同に所属する二名が常駐しているとみられ、平成元年九月二七日から平成二年六月二五日までの間に右常駐者を含め、統一共産同四名、プロ青同一名の過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者一名の計六名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に統一共産同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に六回確認されている。

(2) 統一共産同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

統一共産同団結小屋には前記(1)のとおり、統一共産同及びプロ青同に所属する者らが出入りしているところ、右各セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思の表明状況については、前記4(五)(2)において述べたとおりである。

(3) 以上のように、統一共産同団結小屋は、平成元年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙、集会等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、③右使用禁止命令発出に反発し、これを粉砕する等、統一共産同団結小屋に関連する暴力主義的破壊活動等の意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、統一共産同団結小屋は、多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性が高かったということができる。

(六) 以上述べたとおりであるから、本件各工作物がいずれも本法三条一項一号の要件を充足していることは明らかであり、運輸大臣が新空港の安全確保のため、本件各工作物に平成二年の使用禁止命令を発出したことは合憲かつ適法なものである。

6  平成三年の使用禁止命令の要件充足性

(一) 暴力主義的破壊活動者の認定

本件各工作物には、後述のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各過激派集団に所属する者が出入りしていた。

これらの過激派集団が、過去において暴力主義的破壊活動を行ったことは前記4(一)のとおりであるし、平成二年の使用禁止命令発出後に、右各過激派集団がこれまでの運動方針を否定し、実力闘争による新空港廃港に向けた活動を放棄する意思を表明するなど、同過激派集団の過去の行動や意思表明を斟酌することが相当ではないと認められる特段の事情も存しない。むしろ右過激派集団は、その機関紙において、従前同様の暴力主義的破壊活動などに関する意思を表明していたと認められるのであり、本件各工作物に出入りしていた過激派集団に属する者は、その所属する過激派集団の思想主張に賛同し、その掲げる目標の実現に向けて活動していると認められ、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったことは明らかである。

(二) 新労農合宿所の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

新労農合宿所の建設経緯、構造及び外形については、前記5(二)(1)に述べたとおりである。

新労農合宿所には平成三年六月現在、過激派集団である第四インターに所属するP1、P2の二名のほか、P9の計三名が常駐しており、平成二年九月一九日から平成三年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター五名、プロ青同二名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一〇名の出入りが確認されているところ、このうち三名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に三回確認されている。

(2) 新労農合宿所に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

新労農合宿所には前記(1)のとおり、第四インター及びプロ青同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトは、その機関紙において、いずれも暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している。

(3) 以上のように、新労農合宿所は、平成二年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、新労農合宿所が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(三) インターκ団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

インターκ団結小屋の建設経緯、構造及び外形については、前記4(三)(1)及び5(三)(1)に述べたとおりである。

インターκ団結小屋には、平成三年六月現在、P4、P10、P3のいずれも第四インターに所属する三名がその所在地に住民登録を有し、常駐しており、平成二年九月一九日から平成三年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター五名、プロ青同一名、統一共産同一名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一二名の出入りが確認されているところ、このうち三名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に七回確認されている。

(2) インターκ団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

インターκ団結小屋には前記(1)のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同等の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、第四インター及びプロ青同の機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明は、前記4(三)(2)において述べたとおりであり、また、統一共産同も、その機関紙において暴力主義的破壊活動等に関する意思表明及び本件各工作物に関連した意思表明を行っている。

(3) 以上のように、インターκ団結小屋は、平成二年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、インターκ団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(四) プロ青同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

プロ青同団結小屋の建設経緯、構造及び外形については前記4(四)(1)に述べたとおりである。

プロ青同団結小屋には、平成三年六月現在、五名位が常駐していたとみられ、その中にはプロ青同構成員として把握され、暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件で検挙歴を有しているP12がいる。また、平成三年三月一七日には原告反対同盟のP29派全国集会参加のため約四〇名がプロ青同団結小屋から出発している。

(2) プロ青同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

プロ青同団結小屋には前記(1)のとおり、プロ青同に所属する者らが出入りし、右同セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明については、前記4(四)(2)において述べたと同様である。

(3) 以上のように、プロ青同団結小屋は、平成二年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属するセクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、プロ青同団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(五) 統一共産同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

統一共産同団結小屋の建設経緯、構造及び外形は前記4(五)(1)及び前記5(五)(1)に述べたとおりである。

統一共産同団結小屋には、平成三年六月現在、統一共産同に所属するP6、P15の常駐が認められており、平成二年九月一九日から平成三年六月三〇日までの間に、右常駐者を含め、統一共産同二名、プロ青同二名等、各過激派集団に所属する者及びこれらの者と行動を共にする者を含め計五名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争での検挙歴を有するとともに、右期間内に統一共産同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に一回確認されている。

(2) 統一共産同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

統一共産同団結小屋には前記(1)のとおり、統一共産同及びプロ青同に所属する者らが出入りしているところ、各セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明は、前記4(五)(2)及び右(三)(2)において述べたとおりである。

(3) 以上のように、統一共産同団結小屋は、平成二年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙及び現地集会等において暴力主義的破壊活動を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、統一共産同団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(六) 以上述べたとおりであるから、前記(二)ないし(五)の本件各工作物がいずれも本法三条一項一号の要件を充足していることは明らかであり、運輸大臣が新空港の安全確保のため、本件各工作物に平成三年の使用禁止命令を発出したことは合憲かつ適法なものである。

7  平成四年の使用禁止命令の要件充足性

(一) 暴力主義的破壊活動者の認定

本件各工作物には、後述のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各過激派集団に所属する者が出入りしていた。

これらの過激派集団が、過去において暴力主義的破壊活動を行ったことは前記4(一)のとおりであるし、後述のとおり、平成三年の使用禁止命令発出後においても、右各過激派集団がこれまでの運動方針を否定し、実力闘争による新空港廃港に向けた活動を放棄する意思を表明するなど、同過激派集団の過去の行動や意思表明を斟酌することが相当ではないと認められる特段の事情も存しない。むしろ右過激派集団は、その機関紙において、従前同様の暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明していたと認められるのであり、以上によれば、本件各工作物に出入りしていた過激派集団に属する者は、その所属する過激派集団の思想主張に賛同し、その掲げる目標の実現に向けて活動していたと認められ、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったことは明らかである。

(二) 新労農合宿所の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

新労農合宿所の建設経緯、構造及び外形については、前記5(二)(1)に述べたとおりである。

新労農合宿所には平成四年七月一日現在、過激派集団である第四インターに所属するP1、P2の二名が住民登録しており、また、その出入りも認められ、平成三年九月一九日から平成四年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター七名、プロ青同一名、統一共産同一名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一〇名の出入りが確認されているところ、このうち三名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に七回確認されている。

(2) 新労農合宿所に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

新労農合宿所には前記(1)のとおり、第四インター及びプロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトは機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している。

(3) 以上のように、新労農合宿所は、平成三年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、新労農合宿所が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(三) インターκ団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

インターκ団結小屋の建設経緯、構造及び外形については、前記4(三)(1)及び前記5(三)(1)に述べたとおりである。

インターκ団結小屋には平成四年七月一日現在、P4、P3のいずれも第四インターに所属する二名がその所在地に住民登録を有し、かつ、その常駐が認められ、平成三年九月一九日から平成四年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター五名等、過激派集団のセクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計六名の出入りが確認されているところ、このうち三名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に一回確認されている。

(2) インターκ団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

インターκ団結小屋には前記(1)のとおり、第四インターに所属する者らが出入りしているところ、第四インターの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明については、前記4(三)(2)において述べたとおりである。

(3) 以上のように、インターκ団結小屋は、平成三年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する第四インターは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、インターκ団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(四) プロ青同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

プロ青同団結小屋の建設経緯、構造及び外形については前記4(四)(1)に述べたとおりである。

プロ青同団結小屋には、平成三年九月一九日から平成四年六月三〇日までの間に、プロ青同に所属する者計五名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にプロ青同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に一回確認されている。

(2) プロ青同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

プロ青同団結小屋には前記(1)のとおり、プロ青同に所属する者らが出入りしているところ、右同セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明については、前記4(四)(2)において述べたとおりである。

(3) 以上のように、プロ青同団結小屋は、平成三年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属するプロ青同は、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、プロ青同団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(五) 統一共産同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

統一共産同団結小屋の建設経緯、構造及び外形については前記4(五)(1)及び前記5(五)(1)に掲げたとおりであるが、前記5(五)(1)の看板については、平成四年七月二二日までに撤去された。

統一共産同団結小屋には、平成四年六月現在、統一共産同に所属するP6、P15の常駐が認められており、平成三年九月一九日から平成四年六月三〇日までの間に、右常駐者を含め、統一共産同二名、第四インター二名の過激派集団に所属する者計四名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争での検挙歴を有するとともに、右期間内に同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に五回確認されている。

(2) 統一共産同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

統一共産同団結小屋には前記(1)のとおり、統一共産同及び第四インターに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明については、前記4(五)(2)に述べたとおりである。

(3) 以上のように、統一共産同団結小屋は、平成三年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙及び現地集会等において暴力主義的破壊活動を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、統一共産同団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(六) 以上述べたとおりであるから、前記(二)ないし(五)の本件各工作物がいずれも本法三条一項一号の要件を充足していることは明らかであり、運輸大臣が新空港の安全確保のため、本件各工作物に平成四年の使用禁止命令を発出したことは合憲かつ適法なものである。

8  平成五年の使用禁止命令の要件充足性

(一) 暴力主義的破壊活動者の認定

本件各工作物には、後述のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各過激派集団に所属する者が出入りしていた。

これらの過激派集団が、過去において暴力主義的破壊活動を行ったことは前記4(一)のとおりであるし、後述のとおり、平成四年の使用禁止命令発出後においても、右各過激派集団が、これまでの運動方針を否定し、実力闘争による新空港廃港に向けた活動を放棄する意思を表明するなど、同過激派集団の過去の行動や意思表明を斟酌することが相当ではないと認められる特段の事情も存しない。むしろ右各過激派集団は、その機関紙において、従前同様の暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明していたと認められるのであり、本件各工作物に出入りしていた過激派集団に属する者は、その所属する過激派集団の思想主張に賛同し、その掲げる目標の実現に向けて活動していると認められ、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったことは明らかである。

(二) 新労農合宿所の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

新労農合宿所の建設経緯、構造及び外形については、前記5(二)(1)に述べたとおりである。

新労農合宿所には、平成五年六月二九日現在、過激派集団である第四インターに所属するP1、P2及び過激派集団であるプロ青同に所属するP7の三名がその所在地に住民登録を行っており、平成四年九月一九日から平成五年六月三〇日までの間に右三名を含め、第四ンター五名、プロ青同四名、統一共産同一名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一五名の出入りが確認されているところ、このうち四名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に四回確認されている。

(2) 新労農合宿所に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

新労農合宿所には前記(1)のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトは機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している。

(3) 以上のように、新労農合宿所は、平成四年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、新労農合宿所が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(三) インターκ団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

インターκ団結小屋の建設経緯については、前記4(三)(1)及び前記5(三)(1)に述べたとおりである。

インターκ団結小屋には、平成五年六月二九日現在、P4、P3のいずれも第四インターに所属する二名がその所在地に住民登録を行っており、かつ常駐していたほか、平成四年九月一九日から平成五年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター四名、プロ青同一名の過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計七名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有する。また右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に三回確認されている。

(2) インターκ団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

インターκ団結小屋には、前記(1)のとおり、第四インター及びプロ青同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明については、前記4(三)(2)において述べたとおりである。

(3) 以上のように、インターκ団結小屋は、平成四年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、インターκ団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(四) プロ青同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

プロ青同団結小屋の建設経緯、構造及び外形については前記4(四)(1)に述べたとおりである。

プロ青同団結小屋には、平成四年九月一九日から平成五年六月三〇日までの間に、プロ青同三名、第四インター一名の過激派集団の各セクトに所属する者計四名の出入りが確認されているところ、このうち三名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有する。

(2) プロ青同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

プロ青同団結小屋には前記(1)のとおり、プロ青同及び第四インターの各セクトに所属する者らが出入りし、右各セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明は、前記4(四)(2)において述べたとおりである。

(3) 以上のように、プロ青同団結小屋は、平成四年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、プロ青同団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(五) 統一共産同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

統一共産同団結小屋の建設経緯、構造及び外形については前記4(五)(1)、5(五)(1)及び7(五)(1)に述べたとおりであるが、平成元年一月二五日に設置された孟宗竹製の高さ約一二メートルの櫓については、平成六年二月二二日の強風により櫓の一部が倒壊したため、同月二三日にP6が同櫓を撤去した。

統一共産同団結小屋には、平成五年五月現在、統一共産同に所属するP6、P15の常駐が認められており、平成四年九月一九日から平成五年六月三〇日までの間に、右常駐者を含め、統一共産同二名、第四インター二名の過激派集団の各セクトに所属する者計四名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争での検挙歴を有するとともに、右期間内に統一共産同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に一回確認されている。

(2) 統一共産同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

統一共産同団結小屋には前記(1)のとおり、統一共産同及び第四インターに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明は、前記4(五)(2)に述べたとおりである。

(3) 以上のように、統一共産同団結小屋は、平成四年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙及び現地集会等において暴力主義的破壊活動を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、統一共産同団結小屋が、多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(六) 以上述べたとおりであるから、前記(二)ないし(五)の本件各工作物がいずれも本法三条一項一号の要件を充足していることは明らかであり、運輸大臣が新空港の安全確保のため、本件各工作物に平成五年の使用禁止命令を発出したことは合憲かつ適法なものである。

9  平成六年の使用禁止命令の要件充足性

(一) 暴力主義的破壊活動者の認定

(1) 本件各工作物には、後述のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各過激派集団に所属する者が出入りしていた。

これらの過激派集団は、過去に暴力主義的破壊活動を行い、かつ、後述のとおり、平成五年の使用禁止命令発出後においても、右各過激派集団が、これまでの運動方針を否定し、実力闘争による新空港廃港に向けた活動を放棄する意思を表明するなど、同過激派集団の過去の行動や意思表明を斟酌することが相当ではないと認められる特段の事情も存しない。むしろ、第四インター及び統一共産同は、その機関紙において、従前同様の暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明していたと認められるのであり、本件各工作物に出入りしていた過激派集団に属する者は、その所属する過激派集団の思想主張に賛同し、その掲げる目標の実現に向けて活動していると認められ、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったことは明らかである。

(2) なお、プロ青同は、平成五年の使用禁止命令発出以降、その機関紙において直接暴力主義的破壊活動等に関する意思表明を行ったことは把握されていないが、このような活動は、その性質上、その実行前に具体的に予告されることが期待できるものではないので、これを過大評価すべきではない。そして、プロ青同が新空港廃港に向けた活動を放棄したとの事情は存せず、その構成員は、第四インターや統一共産同が出入りする新労農合宿所やインターκ団結小屋に出入りしていたこと、右各過激派集団は、後記(二)(2)のとおり、依然として、暴力主義的破壊活動等に関する意思表明を行っていたこと、さらに、プロ青同は、平成六年六月八日に通称「κ現地闘争本部」空き地で行われた「モザンビークPKO派兵反対六・八現地行動」集会において、他の過激派集団とともに参加し、右集団の各派の中で、プロ青同代表者が「θからの派兵は絶対にさせないんだという気持ちで闘っていく」との発言をしていること等を勘案すると、プロ青同が暴力主義的破壊活動等を行う意思を有していたことは明らかであり、プロ青同に所属する者が暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性は高かったと認められる。

(二) 新労農合宿所の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

新労農合宿所の建設経緯、構造及び外形については、前記5(二)(1)に述べたとおりである。

新労農合宿所には平成六年七月五日現在、過激派集団である第四インターに所属するP1、P2の二名がその所在地に住民登録を行っており、平成五年九月一九日から平成六年六月三〇日までの間に右二名を含め、第四インター五名、プロ青同三名、統一共産同二名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一六名の出入りが確認されているところ、このうち三名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に八回確認されている。

(2) 新労農合宿所に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

新労農合宿所には前記(1)のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトは機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している。

ところで、このころから、右各過激派集団のうち、プロ青同と統一共産同は、自衛隊が新空港から海外へ向けて派遣されることをもって新空港の軍事空港化ととらえ、これを新空港を廃港に追い込まなければならない理由の一つに掲げるようになった。

しかしながら、右両集団は、「新空港の軍事空港化」を理由として新空港の廃港に向けた主張をしつつも「農民とともに闘ってきた主体の中で、侵略空港粉砕の戦線を再構築し」などとして、あくまでその基本的立場は前述のとおりのこれまでの基本的闘争路線であるとの立場を堅持しているものと認められる。

したがって、「新空港の軍事空港化」の主張も、結局は、実力により新空港を廃港に追い込むという基本的な闘争路線に基づき、かつ、そのときどきの世論をも視野に入れて、その最終目標である新空港廃港を主張する意思表明にすぎないのであって、これら過激派集団の過去の行動や意思表明を併せ斟酌することが相当でないとする特段の事情になるものでないことは明らかである。

(3) 以上のように、新労農合宿所は、平成五年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していることを認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、労農合宿所が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(三) インターκ団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

インターκ団結小屋の建設経緯については、前記4(三)(1)及び前記5(三)(1)に述べたとおりである。

インターκ団結小屋には、平成六年七月五日現在、P4、P3のいずれも第四インターに所属する二名がその所在地に住民登録を行っており、かつ、常駐していると認められる。平成五年九月一九日から平成六年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター一名、プロ青同一名の過激派集団の各セクトに所属する者計四名の出入りが確認されており、また右期間内に団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に二回確認されている。

(2) インターκ団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

インターκ団結小屋には前記(1)のとおり、第四インター及びプロ青同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明は、前記4(三)(2)において述べたとおりである。

(3) 以上のように、インターκ団結小屋は、平成五年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、インターκ団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(四) プロ青同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

プロ青同団結小屋の建設経緯、構造及び外形については前記4(四)(1)に述べたとおりである。

プロ青同団結小屋には、平成五年九月一九日から平成六年六月三〇日までの間に、過激派集団のセクトであるプロ青同に所属する四名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にプロ青同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に二回確認されている。

(2) プロ青同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

プロ青同団結小屋には前記(1)のとおり、プロ青同に所属する者らが出入りしているところ、平成五年の使用禁止命令発出以降、右セクトが機関紙において直接暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明したことは把握されてはいないものの、前記(一)のとおり、右セクトが依然暴力主義的破壊活動等を行う意思を有していたことは明らかであり、右各セクトが新空港を実力闘争で廃港に追い込むという闘争路線を放棄する徴憑は何ら認められない。

(3) 以上のように、プロ青同団結小屋は、平成五年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属するセクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明こそしていないものの、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している他の各セクトとともに行動する等、依然として新空港を実力で廃港に追い込むという闘争路線を堅持しており、これを放棄する徴憑がないこと、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、プロ青同団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(五) 統一共産同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

統一共産同団結小屋の建設経緯、構造及び外形については前記4(五)(1)、5(五)(1)、7(五)(1)及び8(五)(1)に掲げたとおりである。

統一共産同団結小屋には、平成六年五月現在、統一共産同に所属するP6がその所在地に住民登録を行っており、平成五年九月一九日から平成六年六月三〇日までの間に同人を含め、統一共産同に所属する者二名及びこれらの者と行動を共にする者計三名の出入りが確認されているところ、このうち一名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争での検挙歴を有している。

(2) 統一共産同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

統一共産同団結小屋には前記(1)のとおり、統一共産同に所属する者らが出入りしているところ、統一共産同機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明は、前記4(五)(2)に述べたとおりである。

(3) 以上のように、統一共産同団結小屋は、平成五年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する統一共産同は、機関紙等において暴力主義的破壊活動を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、統一共産同団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(六) 以上述べたとおりであるから、前記(二)ないし(五)の本件各工作物がいずれも本法三条一項一号の要件を充足していることは明らかであり、運輸大臣が新空港の安全確保のため、本件各工作物に平成六年の使用禁止命令を発出したことは合憲かつ適法なものである。

10  平成七年の使用禁止命令の要件充足性

(一) 暴力主義的破壊活動者の認定

本件各工作物には、後述のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各過激派集団に所属する者が出入りしていた。

これらの過激派集団が、過去において暴力主義的破壊活動を行ったことは前記4(一)のとおりであるし、後述のとおり、平成六年の使用禁止命令発出後においても、右各過激派集団が、これまでの運動方針を否定し、実力闘争による新空港廃港に向けた活動を放棄する意思を表明するなど、同過激派集団の過去の行動や意思表明を斟酌することが相当ではないと認められる特段の事情も存しない。むしろ右各過激派集団は、それぞれの機関紙等において、昭和五三年の管制塔襲撃事件を右各集団の反対闘争における原点であるとした上で、これを肯定し、依然として話し合いによる解決を拒否してあくまで実力闘争を行う旨意思表明していた。

過激派集団の活動の歴史をみても、セクトが異なる過激派集団は、互いに他の集団に刺激されてその活動を競い合い、あるいはこれに呼応同調して、各派勢力の温存強化を図りつつ、ときには共闘関係を結び、その活動を展開してきたのであって、本件においても、各過激派集団は、その掲げる運動方針ないし意見の違いは存するものの、新空港開港実力阻止という最終目的は完全に一致していたものである。

なお、プロ青同は、平成六年の使用禁止命令発出以降、その機関紙において、直接暴力主義的破壊活動等に関する意思表明を行ったことは把握されていないが、これを過大評価することはできないことは前記9(一)(2)のとおりであるし、かえって、プロ青同に所属する者は、第四インターや統一共産同が出入りする新労農合宿所やインターκ団結小屋に出入りしており、右各過激派集団が後記(二)(2)のとおり、依然として、暴力主義的破壊活動等に関する意思表明を行っていた上、平成六年九月二日、同月三〇日及び同年一〇月一〇日に通称「κ現地闘争本部」前で行われた「ルワンダ自衛隊派兵阻止現地闘争」に、プロ青同団結小屋に出入りする者二名が、第四インター及び統一共産同等の各過激派集団に所属する者とともに参加した事実も認められるのであって、前述のような平成六年に至るまでのプロ青同による活動状況及び意思表明状況等を前提にすると、プロ青同に所属する者が暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったことは明らかである。

(二) 新労農合宿所の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

新労農合宿所の建設経緯、構造及び外形については、前記5(二)(1)に述べたとおりである。

新労農合宿所には、平成六年六月二二日現在、過激派集団である第四インターに所属するP1、P2の二名がその所在地に住民登録を行っており、平成六年九月二九日から平成七年六月二七日までの間に右二名を含め、第四インター四名、プロ青同二名、統一共産同一名等、過激派集団の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一一名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に五回確認されている。

(2) 新労農合宿所に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

新労農合宿所には前記(1)のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトは機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している。

(3) 以上のように、新労農合宿所は、平成六年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、新労農合宿所が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(三) インターκ団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

インターκ団結小屋の建設経緯、構造及び外形については、前記4(三)(1)及び前記5(三)(1)に述べたとおりである。

インターκ団結小屋には、平成七年六月二二日現在、P4、P3のいずれも第四インターに所属する二名がその所在地に住民登録を行っており、常駐していると認められる。平成六年九月一九日から平成七年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター五名、プロ青同二名の過激派集団の各セクトに所属する者計七名の出入りが確認されているところ、このうち二名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に二回確認されている。

(2) インターκ団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

インターκ団結小屋には前記(1)のとおり、第四インター及びプロ青同の各セクトに所属する者らが出入りしているところ、第四インター機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明及び実行状況は、前記4(二)(2)において述べたとおりである。

(3) 以上のように、インターκ団結小屋は、平成六年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する第四インターは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、インターκ団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(四) プロ青同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

プロ青同団結小屋の建設経緯、構造及び外形については前記4(四)(1)に述べたとおりである。

プロ青同団結小屋には、平成六年九月一九日から平成七年六月三〇日までの間に、過激派集団のセクトであるプロ青同に所属する二名の出入りが確認されているところ、このうち一名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間にプロ青同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に一回確認されている。

(2) プロ青同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

プロ青同団結小屋には前記(1)のとおり、プロ青同に所属する者らが出入りしているところ、平成六年の使用禁止命令発出以降、右セクトは機関紙において暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明したことは把握されてはいないものの、前記(一)のとおり、右セクトが依然暴力主義的破壊活動等を行う意思を有していたことは明らかであり、右各セクトが新空港を実力闘争で廃港に追い込むという闘争路線を放棄する徴憑は何ら認められない。

(3) 以上のように、プロ青同団結小屋は、平成六年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属するセクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明こそしていないものの、暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している他の各セクトとともに行動する等、依然として新空港を実力闘争で廃港に追い込むという闘争路線を堅持しており、これを放棄する徴憑がないこと、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、プロ青同団結小屋が多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(五) 統一共産同団結小屋の要件充足性について

(1) 建設経緯、構造、外形及び使用の態様等

統一共産同団結小屋の建設経緯、構造及び外形については前記4(五)(1)、5(五)(1)、7(五)(1)及び8(五)(1)に掲げたとおりである。

統一共産同団結小屋には、平成七年六月二二日現在、統一共産同に所属するP6がその所在地に住民登録を行っている。平成六年九月一九日から平成七年六月三〇日までの間に右P6を含め、統一共産同に所属する者二名及び第四インターに所属する者一名の過激派集団の各セクトに所属する者計三名の出入りが確認されているところ、このうち一名が暴力主義的破壊活動等に該当する新空港反対闘争での検挙歴を有するとともに、右期間内に同団結小屋で二人以上の暴力主義的破壊活動者が同時に一回確認されている。

(2) 統一共産同団結小屋に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況

統一共産同団結小屋には前記(1)のとおり、統一共産同及び第四インターに所属する者らが出入りしているところ、右各セクトの機関紙における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明は、前記4(五)(2)に述べたとおりである。

(3) 以上のように、統一共産同団結小屋は、平成六年の使用禁止命令発出以降も、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有し、現に多数の暴力主義的破壊活動者が出入りしていること、②出入りしている者らが所属する各セクトは、機関紙等において暴力主義的破壊活動を実行する意思を表明していること、を認めることができ、これらの状況に鑑みた上で総合的に判断すれば、統一共産同団結小屋が、多数の暴力主義的破壊活動者による、暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供される蓋然性は高かったということができる。

(六) 以上述べたとおりであるから、前記(二)ないし(五)の本件各工作物がいずれも本法三条一項一号の要件を充足していることは明らかであり、運輸大臣が新空港の安全確保のため、本件各工作物に平成七年の使用禁止命令を発出したことは合憲かつ適法なものである。

11  故意・過失の不存在

仮に、本件各処分が、その要件充足性を欠いた違法な処分であると判断されるとしても、本件各処分をなすに当たり、運輸大臣が行った判断過程は既に述べたとおりであって、運輸大臣が本件各処分をするについて、故意・過失は存在しないから、被告は、本件各処分につき、国家賠償責任を負うものではない。

12  損害の不発生

(一) 本件各処分は、本件各工作物を、本法三条一項二号の用、すなわち多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供することを禁止したにすぎない。そして、本法の目的やその立法経緯等に鑑みれば、規制区域内に存在する工作物を多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供することは、同区域内における法秩序維持の観点からみて、そもそも許されない態様の使用であるというべく、このような使用が禁止されたことをもって、法的に保護された利益が侵害されたということができないことは明らかであり、これによって、原告らが損害を被ったということはできない。

(二) また、本件各工作物が、右以外の用として、すなわち生活用、事務所用、宿泊施設用等として一般的に使用することは何ら制限されていないところ、実際にも本件各工作物には過激派集団の構成員を含めた人間が常駐・出入りしていたのであるから、原告らにつき、居住の自由等を制限されたことによる損害も認められない。

これに対し、原告らは、本件各使用禁止命令によって生じた損害として、日常の起居動作について、許される一般的使用と許されない暴力主義的破壊活動等の区別に日々悩まされ、甚大な精神的損害等を被っている旨主張するが、このような心理状態が法律上保護すべき利益に当たらないことは明らかであるのみならず、本法三条一項一号の適用要件は、前記3において述べたとおり明確であるから、原告らが右のような判断に悩まされていることをもって損害と評価することはできない。

(三) さらに、原告らは、本件各処分を受けること自体によって原告らの名誉が毀損されるなどの損害を被ったと主張するが、被告は、本法三条一項に基づき本件各処分を発出したのであり、その内容も、本件各工作物を本法三条一項一号の用に供することを禁止するというだけのものであるから、本件各処分が発出されたこと自体によって、原告らの名誉が毀損される等の法律上の利益の侵害や損害が発生する余地はない。

第三当裁判所の判断

一  本法の憲法適合性について

1  原告らは、本法は制定の経緯、態様に照らして拙速を免れず、法全体として違憲無効であると主張するので、この点を検討する。

本法の法案が衆議院及び参議院でそれぞれ可決されたものとされ、昭和五三年五月一三日、同年法律第四二号として公布されたものであることは公知の事実であるところ、法案の審議にどの程度の時間をかけるかは専ら各議院の判断によるものであり、その時間の長短により公布された法律の効力が左右されるものでないことはいうまでもない。

したがって、原告らの右の主張は採用できない。

2  原告らは、本件各処分の根拠となった本法三条一項は、憲法二一条一項、二二条一項、二九条一項、二項、三一条、三五条にそれぞれ違反するものであり、このように憲法に違反する立法である本法を根拠とする本件各処分も違憲、違法なものであると主張するので、この点につき順次検討する。

(一) 本法制定の経緯について

証拠(乙一ないし五、七ないし九)及び弁論の全趣旨によれば、本法制定の経緯として次の事実が認められる。

新空港は、その建設に反対する原告反対同盟や、当時、原告反対同盟を支援していたいわゆる過激派等による実力闘争が強力に展開されたため、建設が予定より大幅に遅れ、ようやく新空港の供用開始日を昭和五三年三月三〇日とする告示がされたが、その直前の同月二六日に、原告反対同盟の支援者である過激派の集団が新空港内に火炎車を突入させ、新空港内に火炎びんを投げるとともに、管制塔に侵入してレーダーや送受信器等の航空管制機器類を破壊する等の事件が発生したため、右供用開始日を同年五月二〇日に延期せざるを得なくなった。このような事態に対し、政府は、同年三月二八日に過激派集団の暴挙を厳しく批判し、新空港を不法な暴力から完全に防護するための抜本的対策を強力に推進する旨の声明を発表した。また、国会においても、衆議院では同年四月六日に、参議院でも同月一〇日に、全会一致又は全党一致で、過激派集団の破壊活動を許し得ざる暴挙と断じた上、政府に対し、暴力排除のため断固たる処置を採るとともに、地元住民の理解と協力を得るよう一段の努力を傾注すべきこと及び新空港の平穏と安全を確保し、我が国内外の信用回復のため万全の諸施策を強力に推進すべきことを求める決議をそれぞれ採択した。本法は、右のような過程を経て議員提案による法律として成立したものである。

(二) 本法三条一項の憲法二一条一項適合性

(1) 現代民主主義社会においては、集会は、国民が様々な意見や情報等に接することにより自己の思想や人格を形成、発展させ、また、相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、さらに、対外的に意見を表明するための有効な手段であるから、憲法二一条一項の保障する集会の自由は、民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重されなければならないものである。

しかしながら、集会の自由といえどもあらゆる場合に無制限に保障されなければならないものではなく、公共の福祉による必要かつ合理的な制限を受けることがあるのはいうまでもない。そして、このような自由に対する制限が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決めるのが相当である(最高裁昭和五二年(オ)第九二七号同五八年六月二二日大法廷判決・民集三七巻五号七九三頁参照)。

(2) ところで、本法三条一項一号は、規制区域内に所在する建築物その他の工作物が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供され、又は供されるおそれがあると認めるときは、運輸大臣は、当該工作物の所有者等に対し、期限を付して当該工作物をその用に供することを禁止することを命ずることができるとしているが、同号に基づく工作物使用禁止命令により当該工作物を多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供することが禁止される結果、多数の暴力主義的破壊活動者の集会も禁止されることになり、ここに憲法二一条一項との関係が問題となる。

(3) そこで検討するに、本法三条一項一号に基づく工作物使用禁止命令により保護される利益は、新空港若しくは航空保安施設等の設置、管理の安全の確保並びに新空港及びその周辺における航空機の航行の安全の確保であり、それに伴い新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全の確保も図られるのであって、これらの安全の確保は、国家的、社会経済的、公益的、人道的見地から極めて強く要請されるのに対し、右工作物使用禁止命令により制限される利益は、多数の暴力主義的破壊活動者が当該工作物を集合の用に供する利益であることに加え、前記(一)の本法制定の経緯にも照らせば、暴力主義的破壊活動等を防止し、新空港の設置、管理等の安全を確保することには、高度かつ緊急の必要性があるというべきであるから、規制区域内において、暴力主義的破壊活動者による工作物の使用を禁止する措置を採り得るとすることは、公共の福祉による必要かつ合理的な制限であるといわなければならない。

なお、原告は、本法の立法目的に正当性、合理性はないから、本法は違憲である旨主張するが、右に述べたところに照らし、採用し難い。

(4) 原告らは、本法は、表現の自由に対する過度に広範な制限であるから、全体として違憲である旨主張するが、本法二条二項にいう「暴力主義的破壊活動等を行い、又は行うおそれがあると認められる者」とは、本法一条に規定する目的や本法三条一項の規定の仕方、さらには、同項の使用禁止命令を前提として同条六項の封鎖等の措置や同条八項の除去の措置が規定されていることなどに照らし、「暴力主義的破壊活動等を現に行っている者又はこれを行う蓋然性の高い者」の意味に解すべきである。そして、本法三条一項にいう「その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるとき」とは、「その工作物が次の各号に掲げる用に現に供され、又は供される蓋然性が高いと認めるとき」の意味に解すべきである(最高裁昭和六一年(行ツ)第一一号平成四年七月一日大法廷判決・民集四六巻五号四三七頁)。

本法の各規定の文言が以上のとおり解されること、また、本法三条一項一号の使用禁止命令によって制限されるべき集会の自由が、本法二条三項に定める規制区域内に所在する特定の工作物内における多数の暴力主義的破壊活動者が行う集会の自由にとどまることを併せ考慮すると、本法三条一項一号が過度に広範な規制を行うものとはいえず、その規定する要件も不明確なものであるとはいえないから、この点に関する原告の主張は理由がない。

(5) 原告らは、本法三条一項一号の規定が、憲法二一条二項の事前抑制禁止の法理に違反し、また、より制限的でない他の選び得る手段の法理や、明白かつ現在の危険の法理にも違反するとも主張するが、前記のように使用禁止命令の実体的要件について限定された解釈を採り、かつ、使用禁止命令が期限付きであることや、禁止の対象が同項一号の用に供することに限定されていること等を併せ考慮すると、本法三条一項一号に基づく使用禁止命令は、新空港の設置、管理等の安全の確保という高度かつ緊急の必要性に基づき、集会の自由に対する必要かつ合理的な事前抑制を定めたものというべきであるし、前述のところからすれば、本法の合憲性を、より制限的でない他の選び得る手段の法理や、明白かつ現在の危険の法理の基準に立って判断すべきであるとも認め難いから、右原告らの主張は採用できない。

(6) 以上のとおり、原告らが、本法三条一項一号は、憲法二一条一項に違反するとして主張する諸点は、いずれも採用できない。

(三) 本法三条一項の憲法二二条一項適合性

(1) 本法三条一項一号に基づく工作物使用禁止命令により多数の暴力主義的破壊活動者が当該工作物に居住することができなくなるとしても、右工作物使用禁止命令は、前記(二)(3)のとおり、新空港の設置、管理等の安全を確保するという国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からの極めて強い要請に基づき、高度かつ緊急の必要性の下に発せられるものであるから、右工作物使用禁止命令によってもたらされる居住の制限は、公共の福祉による必要かつ合理的なものであるといわなければならない(前掲平成四年の最判参照)。

(2) したがって、本法三条一項一号は、憲法二二条一項に違反するものではなく、これに反する原告らの主張は採用できない。なお、原告らは、本法三条一項三号についても憲法二二条一項違反を主張しているが、右三号は本件工作物使用禁止命令に関係がない。

(四) 本法三条一項の憲法二九条一、二項適合性

(1) 本法三条一項に基づく工作物使用禁止命令は、当該工作物を、①多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供すること、②暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎びん等の物の製造又は保管の場所の用に供すること、又は③新空港又はその周辺における航空機の航行に対する暴力主義的破壊活動者による妨害の用に供すること、の三態様の使用を禁止するものである。そして、右三態様の使用のうち、多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供することを禁止することが、新空港の設置、管理等の安全を確保するという国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からの極めて強い要請に基づくものであり、高度かつ緊急の必要性を有するものであることは前記(二)(3)のとおりであり、この点は他の二態様の使用禁止についても同様であるから、右三態様の使用禁止は、財産の使用に対する公共の福祉による必要かつ合理的な制限であるといわなければならない(前掲平成四年の最判参照)。

また、原告は、本法は、「暴力主義的破壊活動(者)」(三条一項一号ないし三号)、「妨害の用」(同項三号)、「供されるおそれ」(同項本文)といった不明確な要件の認定を運輸大臣に包括的に委任するもので、法律による定めとはいえないと主張するが、本法三条一項一号の規定する要件が不明確なものであるといえないことは、前記(二)(4)のとおりであるし、本法三条一項二号、三号については本件工作物使用禁止命令に関係がない。

(2) したがって、本法三条一項一号は、憲法二九条一、二項に違反するものではないから、これに反する原告らの主張は採用できない。

(五) 本法三条一項の憲法三一条適合性

(1) 憲法三一条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。

(2) 本法三条一項に基づく工作物使用禁止命令により制限される権利

利益の内容、性質は、前記(四)(1)のとおり当該工作物の三態様における使用であり、右命令により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等は、前記(二)(3)のとおり、新空港の設置、管理等の安全という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からその確保が極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであることなどを総合較量すれば、右命令を発するに当たり、その相手方に対し、事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、本法三条一項が憲法三一条の法意に反するものということはできない(前掲平成四年の最判参照)。

(3) また、原告らは、憲法三一条は、人権規制立法の明確性の原則を要請しているところ、本法は、不明確、無限定な文言から成り立ち、構成要件が曖昧なものであり、一切の解釈を行政権にゆだねるとともに、憲法に規定する各基本的人権の全面的制限をも可能としているものであるから、その文言の漠然性の故に無効とされるべきであるとか、本法三条一項に基づく使用禁止命令は、運輸大臣の認定基準が箸しく恣意的、一般的であって、明確性を欠き、行政権に多大な濫用の可能性を与えているものであるから、この点からも憲法三一条に違反すると主張するけれども、本法三条一項一号の規定する要件が不明確なものであるといえないことは、前記(二)(4)のとおりであり、右要件が曖昧なものであるとか、右要件の認定基準が明確性を欠き、行政権に濫用の可能性を与えているとはいえないのであるから、この点に関する原告らの主張は採用できない。

(六) 本法三条一項の憲法三五条適合性

(1) 憲法三五条の規定は、本来、主として刑事手続における強制につき、それが司法権による事前の抑制の下に置かれるべきことを保障した趣旨のものであるが、当該手続が刑事責任追求を目的とするものではないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない(最高裁昭和四四年(あ)第七三四号同四七年一一月二二日大法廷判決・刑集二六巻九号五五四頁)。しかしながら、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政手続における強制の一種である立入りにすべて裁判官の令状を要すると解するのは相当ではなく、当該立入りが、公共の福祉の維持という行政目的を達成するため欠くべからざるものであるかどうか、刑事責任追求のための資料収集に直接結び付くものであるかどうか、また、強制の程度、態様が直接的なものであるかどうかなどを総合判断して、令状による司法審査の要否を決めるべきである。

(2) 本法三条三項は、運輸大臣は、同条一項の禁止命令をした場合において必要があると認めるときは、その職員をして当該工作物に立ち入らせ、又は関係者に質問させることができる旨を規定し、その際に裁判官の令状を要する旨を規定していない。しかし、右立入り等は、同条一項に基づく使用禁止命令が既に発せられている工作物について、その命令の履行を確保するために必要な限度においてのみ認められるものであり、その立入りの必要性は高いこと、右立入りには職員の身分証明書の携帯及び提示が要求されていること(同条四項)、右立入り等の権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないと規定され(同条五項)、刑事責任追及のための資料収集に直接結び付くものではないこと、強制の程度、態様が直接物理的なものではないこと(九条二項)を総合判断すれば、本法三条一、三項は、憲法三五条の法意に反するものとはいえない(前掲平成四年の最判参照)。

したがって、これに反する原告らの主張は採用できない。

(七) 以上のとおり、本法三条一項が憲法二一条一項、二二条一項、二九条一、二項、三一条、三五条に違反するということはできない。

二  本件各処分の憲法適合性について

1  原告らは、本法につき、可能な限り合憲的限定解釈を施すことによって、本法自体の違憲無効を免れたとしても、右合憲的な限定解釈をすれば、適用されるべき建築物の範囲は、本法一条の立法目的達成のため、必要最小限の範囲に限定されるべきところ、少なくとも、本件各工作物については、本法三条一項各号の要件を何ら具備していないから、本件各工作物に対し同法を適用することは、原告らの集会及びその他の表現活動の自由、居住の自由、財産権、適正手続の保障、住居の不可侵等の基本的人権を、著しく侵害するものである旨主張する。

しかし、右原告の主張によっても、必要最小限の範囲とはいかなる部分を指すのか、また、本件各工作物がなぜその要件を充たさないのかは必ずしも明確ではないし、その点はさておいても、本法の適用されるべき建築物の範囲を、原告ら主張のように限定して解釈すべき具体的根拠はないと考えられるから、右原告らの主張は理由がない。

2  原告らは、仮に本件のような行政処分において、告知、弁解、防御の機会を与えなくてもよい場合があるとしても、少なくとも平成二年以降の使用禁止命令を発するに当たり、高度かつ緊急の必要性がなかったことは明らかであるから、同年以降の使用禁止命令を発するに当たって、告知、弁解、防御の機会を与えなかった運輸大臣の処分は、憲法三一条に反する旨主張する。

しかし、本法三条一項一号によって保護される利益が、新空港又は航空保安施設等の設置、管理等の安全の確保並びに新空港及びその周辺における航空機の航行の安全の確保であり、それに伴い新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全の確保も図られ、これらの安全の確保が、国家的、社会経済的、公益的、人道的見地から極めて強く要請されるものであることは前記一2(二)(3)のとおりであり、このことは、昭和五三年の新空港開港当時も本件各処分が行われた当時においても、基本的に変わりはないのみならず、開港以来、新空港における航空機の離発着回数及び新空港の利用者数が増加する傾向にあったことは公知の事実であることなどからすれば、平成二年以降においても、本法三条一項一号の要件を充足する限り、使用禁止命令を発する高度かつ緊急の必要性があったという状況に特段の変化はないというべきである。このことは、平成五年に、行政手続法が制定され、その第三章で、行政庁が不利益処分を課す際の聴聞、弁明の機会の付与等に関する規定が設けられたにもかかわらず、本法については、その八条の二で、その適用が除外されていることからも裏付けられる。

したがって、この点に関する原告らの主張も理由がない。

三  本件各処分の適法性―本法三条一項一号の要件の具備について

1  本法三条一項一号は、運輸大臣は、規制区域内に所在する工作物が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供され、又は供されるおそれがあると認められるときは、当該工作物の所有者らに対し、期限を付して、当該工作物をその用に供することの禁止を命ずることができる旨を定めているところ、本件各工作物が本法二条三項の規制区域内に存在することは前記第二の一2のとおりであり、また、弁論の全趣旨によれば、本件各工作物の所有者、管理看兼占有者は、前記第二の3記載のとおりであると認められる。

2  また、本法三条一項一号の「暴力主義的破壊活動者」とは、暴力主義的破壊活動等を現に行っている者又はこれを行う蓋然性の高い者の意味に解すべきことは、前記一2(二)(4)のとおりである。

そして、「暴力主義的破壊活動等」とは、新空港若しくは新空港における航空保安施設若しくは機能確保施設のうち政令で定めるものの設置若しくは管理を阻害し、又は新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する本法二条一号各号に掲げる一定の行為をすることをいう(本法二条一項)が、機能確保施設についての政令は未だ設置されていないため、現時点では、機能確保施設の設置若しくは管理を阻害する行為としての暴力主義的破壊活動等は存在し得ないものというべきである。しかしながら、新空港の建設等に反対し、これを実力で阻止することを標榜する者が、新空港の機能を維持、確保するために必要不可欠とされる施設に対して破壊活動を行った場合には、当該行為者の最終的な破壊活動の対象が暴力主義的破壊活動等の向けられる対象として本法二条一項において規定されている新空港自体にあることは明らかであるから、かかる行為者が、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高い者として暴力主義的破壊活動者に該当する場合があることはいうまでもない。

なお、原告らは、航空保安施設についても、条文の解釈からして、当然に具体的な政令の定めが必要であると主張する。

しかしながら、航空保安施設については、特定の空港における航空機の離着陸の安全にかかわる施設に限定する旨規定しているのであるから、その外延及び内包はおのずから明白であり、これらを更に政令で指定しなければならない必要性、合理性は存しないのに対し、機能確保施設については、右の「機能」の解釈いかんによっては対象が極めて広い範囲に及び、政令による限定の必要性があること、また、本法二条三項は、「規制区域」の定義を定め、その二号で「新東京国際空港における航空機の離陸若しくは着陸の安全を確保するために必要な航空保安施設又は新東京国際空港の機能を確保するために必要な施設のうち第一項の政令で定めるものから三千メートルの範囲内で政令で定める区域」と規定しているが、右規定は、同項一号の規定する「規制区域」以外に当該保安施設との関係で規制区域を定める必要がある場合に、右保安施設から三千メートルの範囲内で政令で定める区域を規制区域とする旨を規定しているものであり、「第一項の政令で定めるもの」とは機能施設のみにかかるものと解されることなどに鑑みれば、同条項の「政令で定めるもの」とは、機能確保施設にのみかかるものであって、航空保安施設に関しては政令で定める必要はないものと解されるから、右原告らの主張は理由がない。

3  そして、前記一2(二)(4)のような本法二条二項、三条一項の解釈からすれば、当該工作物が、本法三条一項一号の「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供されるおそれがあるといえるためには、当該工作物が、多数の暴力主義的破壊活動等を現に行っている者又はこれを行う蓋然性の高い者の集合の用に現に供され、又は供される蓋然性が高いと認められる場合であることが必要であり、右実体的要件の有無については、①当該工作物が建設された経緯や、その規模、構造、外観、使用態様等、②当該工作物に常駐ないし出入りする者の人数、経歴、所属団体、前科前歴等、③これらの者又はその所属団体等による暴力主義的破壊活動等の実行の有無、程度及び暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明の有無、程度、④これらの者又はその所属団体等の当該工作物に関連する暴力主義的破壊活動等の実行の有無、程度及び右活動等の意思の表明の有無、程度等を総合的に検討してこれを判断するのが相当である。

4  そこで、以下、右のような見地から、本件各処分が本法三条一項一号の要件を具備するか否かについて、個別に険討する。

四  平成元年の使用禁止命令の適法性について

1  証拠(乙一ないし五、六の1、2、一〇ないし六八、六九の1、2、七〇ないし七四、七五の1、2、七六ないし八五、八六の1ないし3、八七ないし一一一、一一二の1、2、一一三ないし一一七、一一八の1ないし3、一一九、一二〇の1、2、一二一、一二二の1ないし3、一二三、一二四、一二五の1、2、一二六の1、2、一二七、一二八の1、2、一二九、一三〇の1、2、一三一ないし一三四、一三五の1ないし5、一三六の1ないし3、一三七、一三八、一三九の1ないし4、一四〇ないし一四三、一四四の1ないし3、一四五の1ないし5、一四六、一四七、一四八の1、2、一四九の1ないし3、一五〇ないし一五四、一五五の1ないし4、一五六、一五七の1ないし3、一五八、一五九の1ないし3、一六〇の1、2、一六一、一六二の1ないし4、一六三、一六四、一六五の1、2、一六六、一六七の1、2、一六八、一六九の1、2、一七〇、一七一の1ないし4、一七二ないし一七五、一七六の1ないし3、一七七の1ないし3、一七八、一七九、一八〇の1、2、一八一の1ないし3、一八二ないし一八六、一八七の1、2、一八八ないし一九五、一九六の1ないし30、一九七ないし二〇四、二〇六、証人P18、証人P19、証人P20、原告P1、原告P3、原告P5、原告P6、原告反対同盟代表者P21)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 平成元年の使用禁止命令に至る経緯

新空港は、昭和四一年七月四日の閣議決定に基づきその建設が進められ、運輸大臣は昭和五二年一一月二八日、新空港の供用開始を昭和五三年三月三〇日とする旨の告示(乙一、昭和五二年運輸省告示第六〇八号)を行ったが、昭和四三年ころから戦旗荒派、革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)、革命的労働者協会(革労協)、共産主義者同盟戦旗両川派、第四インター、プロ青同等のいわゆる過激派と呼ばれる集団(セクト)が、新空港建設実力阻止を標榜し、新空港周辺地域において、いわゆる団結小屋や、団結砦等を設け、これらを拠点として暴力主義的破壊活動を繰り返し、昭和五三年三月二六日には、第四インター、戦旗荒派、プロ青同所属の約五〇〇名が新空港内に火炎車を突入させるとともに同空港内に乱入して火炎びんを投げ、さらに同空港管制塔内に乱入し、管制機器を破壊する等したため、同月三〇日に予定されていた新空港の開港は延期された(この事態を受けて、新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する暴力主義的破壊活動を防止するために本法が制定されたことは、前記一のとおりである。)。

運輸大臣は、昭和五三年四月七日付け告示(昭和五三年運輸省告示第一九五号、乙一〇)をもって改めて新空港の供用開始期日を同年五月二〇日とし、同日、新空港は開港されたが、それ以後においても、依然として、前記の各セクトは破壊活動等を行い、あるいは、その機関紙等において新空港及び空港周辺関連施設に対する破壊活動等を継続する意思を表明するなどの状況にあった。

(二) 本件各工作物の建設経緯、構造等

(1) 旧労農合宿所(乙一九六の1ないし4)

旧労農合宿所は、平成元年一〇月ころまで、千葉県山武郡δ一二五番一に所在していた工作物の総称である。

右土地は新空港の航空保安施設予定地に当たり、昭和四八年四月まではP11が同所に居住していたが、同人の移転後の昭和五二年四月二日、第一次団結小屋(労農合宿所)の建設が開始された。右作業には第四インター、プロ青同及び戦旗荒派の各セクトに所属する者らが中心となって従事し、同年四月二八日におおむね完成し、同年五月五日には名称を「θ闘争連帯労農合宿所」とする旨決定され、同日から前記各セクトに所属する者らが起居するなどして常駐するようになった。

その後、昭和五四年八月、第二次団結小屋(κ農業研修センター)が、昭和五五年八月、第三次団結小屋(図書館)が、昭和六〇年九月、第四次団結小屋(仮宿泊所)が、いずれも前記各セクトに所属する者らが中心となって建設された。

旧労農合宿所は、労農合宿所約一〇〇名、κ農業研修センター約一〇〇名、図書館約三〇名、仮宿泊所約八〇名の人員収容力を有し、入口に大きな鉄門扉が設けられていた。

(2) インターκ団結小屋(乙一九六の10、11)

インターκ団結小屋は、千葉県山武郡δ九〇番五に所在する工作物の総称である。

右土地は新空港の横風用滑走路予定地に当たり、昭和四六年四月ころフロントが第一次団結小屋を建設し、昭和四七年一〇月下旬に第四インターに所属する者らが常駐するようになり、小屋の名称も「κ学生インター団結小屋」と称するようになった。

その後、第四インターに所属する者らは、昭和五二年七月に右団結小屋を解体し、その跡地に第二次団結小屋を建設したが、右団結小屋も手狭になったとして、昭和五八年四月二六日から同月二八日にかけて解体され、同月二九日から同年五月一三日にかけて、現在の団結小屋(インターκ団結小屋)が建設された。

その後、インターκ団結小屋には、木製監視櫓が昭和六〇年一月に、鉄骨製監視櫓が昭和六二年一月にそれぞれ建設されたが、昭和六二年九月一日に木製櫓は撤去され、同年九月五日から同年一〇月三日にかけて、既設の鉄骨製櫓を吸収する形で高さ約三一メートルの鉄骨製櫓(中段に監視小屋付き)が建設された。なお、右団結小屋及び櫓の建設には、いずれも第四インターに所属する者を中心にその他セクトに属する者が従事している。

インターκ団結小屋は、一階に一八畳間、二階に二四畳間が設けられており、中段に右監視小屋付きの櫓が設置され、さらにその北側塀上に「C滑走路実力阻止」の看板を掲げ、周囲に鉄板塀を巡らせていた。

(3) プロ青同団結小屋(乙一九六の17、18)

プロ青同団結小屋は、千葉県山武郡δ七三番一に所在する工作物の総称である。

プロ青同団結小屋は、昭和五二年一〇月一日から同月二日にかけて、その東側建物(以下「旧館」という。)が、昭和五六年一一月一日から同年一二月一四日にかけて、その西側建物(以下「新館」という。)が、いずれもプロ青同に所属する者らが中心となって建設され、旧館の完成以降、プロ青同に所属する者らが起居するようになった。

プロ青同団結小屋は、旧館一階及び二階に一二畳間が計三つ、また、新館一階に三四畳間、同二階に三九畳間が設けられており、また、外周の一部に巡らされているトタン塀(昭和五六年八月設置)には、「空港を廃港へ包囲突入占拠で大勝利を プロレタリア青年同盟θを闘う青年先鋒隊」と大書されている。

(4) 統一共産同団結小屋(乙一九六の25、26)

統一共産同団結小屋は、千葉県山武郡δ一三一番四に所在する工作物の総称である。

統一共産同団結小屋は、昭和四六年八月一〇日に木造平家建の小屋(第一次団結小屋)が建設され、宇都宮大学全共闘に所属する者らが常駐していたが、昭和五一年八月、右小屋前に「労活評」(統一共産同の大衆組織名)の看板が掲げられ、統一共産同に所属する者らが起居するようになった。

その後、昭和五二年三月一八日には、第一次団結小屋の東側部分に約三坪の部屋(統一共産同団結小屋)が増築され、また、昭和五七年六月一八日から同年七月三日にかけて、第一次団結小屋の北東側にプレハブ二階建の小屋(第二次団結小屋)が、さらに、平成元年一月二五日には、第一次団結小屋の外周に、孟宗竹製の見張り台(高さ約一二メートル)が、いずれも統一共産同に所属する者らが中心となって建設された。

第一次団結小屋には、居室二つと板の間などがあるほか、第二次団結小屋には、鉄骨プレハブ二階建に一二畳間が二つ設けられている。なお、統一共産同団結小屋の周囲には高さ約三ないし五メートルの竹塀が巡らされており、その南端には、「成田用水粉砕!労闘・労活評 θスト実 統共同」と大書された看板が掲げられている。

(三) 本件各工作物の常駐者、出入者等

(1) 旧労農合宿所には、平成元年七月現在、P1(所属セクトは、第四インター、以下、単に所属セクト名のみを表記する。)、P7(プロ青同)、P2(第四インター)の三名が常駐しており、昭和六二年四月四日から平成元年三月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター一一名、戦旗荒派一一名、プロ青同五名、統一共産同二名等、各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計三六名の出入りが確認されているところ、このうち一六名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に同合宿所で二人以上の右各セクト所属者等が同時に一七回確認されている(乙一九六の4)。

また、同合宿所には、昭和五九年二月一三日の新空港警備員待機所に対する放火、昭和六〇年四月八日の空港公団工事局に対する火炎びん発射等の被疑事実に基づき昭和五九年から昭和六三年にかけて千葉県警察により計七回の捜索差押えがなされたが、その際、前記各セクトに所属する者らが数名ずつそこに在所していたことが確認されている(乙一九六の6)。

(2) インターκ団結小屋には、平成元年七月現在、P10、P3、P4のいずれも第四インターに所属する三名が常駐しており、昭和六二年五月九日から平成元年三月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター一三名、戦旗荒派四名、プロ青同三名、統一共産同一名等、各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計二七名の出入りが確認されているところ、このうち一〇名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に二三回確認されている(乙一九六の11)。

また、インターκ団結小屋には、昭和五九年三月一七日の芝山町議会二期工事促進決議に伴う公務執行妨害の被疑事実に基づくもののほか、昭和五九年から昭和六三年にかけて千葉県警察により計二回の捜索差押えがなされたが、その際、前記各セクトに所属する者らが一名あるいは三名在所していたことが確認され、機関紙類が押収されている(乙一九六の12)。

(3) プロ青同団結小屋には、平成元年七月現在、P12、P8、西浦政弘、P13、P14のいずれもプロ青同に所属する五名が常駐しており、昭和六二年四月一一日から平成元年六月一一日までの間に右常駐者を含め、八名のプロ青同に所属する者及びこれらの者と行動を共にする者一名の計九名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に同団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に五回確認されている(乙一九六の18)。

また、プロ青同団結小屋には、昭和六三年一一月六日新空港反対集会の無届けデモに伴う多衆行進又は集団運動に関する条例違反の被疑事実に基づき平成元年に千葉県警察により捜索差押えがなされたが、その際、プロ青同に所属する者ら四名が在所していたことが確認され、機関紙等が押収されている(乙一九六の20)。

(4) 統一共産同団結小屋には、平成元年七月現在、P6、P15、P16のいずれも統一共産同に所属する三名が常駐しており、昭和六二年四月八日から平成元年六月一一日までの間に右常駐者を含め、統一共産同四名、プロ青同二名、計六名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に統一共産同団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に八回確認されている(乙一九六の26)。

さらに、統一共産同団結小屋には、昭和五九年三月一七日の芝山町議会二期工事促進決議に伴う公務執行妨害の被疑事実に基づき千葉県警察により捜索差押えがなされたが、その際、統一共産同に所属する者が立会人になっている(乙一九六の28)。

(四) 各セクトの活動状況

① 昭和五三年五月二〇日、約一六〇〇本の火炎びんや鉄パイプで武装し、新空港の旧第五ゲートに火炎トラック三台を突入させ、同ゲート付近で火炎びんを投てきした(第四インター・プロ青同・戦旗荒派、乙一二、弁論の全趣旨)。

② 昭和五三年五月二〇日、火炎びんを多数所持して千葉県香取郡αのα航空路監視レーダー基地を襲撃した(第四インター・プロ青同・戦旗荒派、乙一二、一九七、弁論の全趣旨)。

③ 昭和五六年一月一九日、千葉市β二三三五の航空燃料パイプライン工事第七立坑に侵入し、火炎びん十数本を投てきした(第四インター、乙六五、一九七の14)。

④ 昭和五八年七月五日、千葉市ζ二丁目の成田空港パイプライン第三管理棟に向けて火炎びんを投てきした(戦旗荒派、乙一〇九、一一〇)。

⑤ 昭和五九年二月一三日、千葉県成田市の新空港二期工区内にある成田空港警備会社のガードマン待機所用のキャンピングカーに時限発火装置とガソソンタンクを仕掛けて全焼させた(戦旗荒派、乙一一八の1ないし3、一一九)。

⑥ 昭和五九年三月一七日、千葉県山武郡芝山町議会で新空港の二期工事促進決議を行う際、傍聴券の配布をめぐって議事を混乱させた(第四インター・戦旗荒派・統一共産同、乙一九八、弁論の全趣旨)。

⑦ 昭和六〇年九月二八日、千葉県成田市η一の二(新空港敷地内)の空港公団工事局の門扉に向けて火炎びん四本やガソリン入りビニール袋を投てきした(プロ青同、乙一四五の1ないし5、一九六の14)。

⑧ 昭和六〇年九月二九日、千葉県山武郡γのγアウターマーカー(無線標識施設)に火炎びん十数本を投てきし、発火・炎上させた(プロ青同、乙一九六の14、一九九)。

⑨ 昭和六〇年一一月二六日、新空港建設の見返り事業として実施されている成田用水μ工区の工事に対し、右工事が新空港の二期工事のために行われているとして、これに反対する支援活動家二名が作業中のショベルカーに乗り込むなどした(統一共産同、乙二〇三、弁論の全趣旨)。

⑩ 昭和六二年三月二日、右成田用水に関する県営ほ場整備事業に反対し、高谷川改修工事現場高谷川河川内で警備に当たっていた警察官の職務を妨害した(戦旗荒派、乙二〇一)。

⑪ 昭和六二年三月六日、前記空港公団工事局に向けて飛翔物(ロケット弾)を発射した(戦旗荒派、乙一五九の1ないし3、弁論の全趣旨)。

⑫ 昭和六二年四月一七日、前記の成田用水μ工区の工事に反対し、櫓に上がり工事を妨害した(戦旗荒派・統一共産同、乙二〇四、弁論の全趣旨)。

⑬ 昭和六二年一〇月二九日、前記空港公団工事局に向けて時限式発射装置を使用し、飛翔物(ロケット弾)を発射させた(戦旗荒派、乙一六五の1、2)。

⑭ 昭和六三年四月一三日、千葉県山武郡δ四一番の地点から、前記空港公団工事局に向けて時限式発射装置を使用し、飛翔物(金属製迫撃弾)を発射させ給水タンクの給水管を破損させた(戦旗荒派、乙一七一の1ないし4)。

⑮ 昭和六三年一一月六日、新空港周辺において原告反対同盟P29派の全国集会で検問中の警察官の職務を妨害した(プロ青同、乙二〇〇、弁論の全趣旨)。

⑯ 平成元年二月二一日、千葉県成田市ε五八番一一の雑木林に時限式発射装置二基を設置し新空港に向けて飛翔物(ロケット弾)を発射しようとした(戦旗荒派、乙二〇二)。

(五) 各セクトの意思表明状況

(1) 第四インターの意思表明状況

第四インターは、平成元年三月二七日付けの機関紙「世界革命」第一〇八七号(乙一八九)において、「現地実力闘争体制の強化を …今こそ、用地内農民と団結した二期工事を断念させる全国運動と、現地における体を張った実力闘争陣形の構築が求められている。…青年学生共闘を機軸とする現地実力闘争態勢の堅持、強化を!θ現地に還流する二期工事・強制収用阻止の全国運動を作り出してゆこう!」との意思表明をしている。

また、旧労農合宿所に関連する意思表明としては、昭和六〇年九月一六日付けの機関紙「世界革命」第九〇六号(乙一九六の4)において、「θ連帯労農合宿所の改築のためのカンパのおねがい」と題して、「…八年間にわたって、労農合宿所はおおきな役割を発揮してきました。ある時は全国の労働者・農民・住民・市民・部落民・障害者・学生などの運動と現地の闘いとが交流するセンターとして。…ある時は、七八年の三・二六管制塔占拠の壮挙をはじめとする数多くの闘争を支えた基地として。…θ二期工事を阻止する大闘争を迎え、労農合宿所の役割は今後ますます重要になります。」旨、さらに、インターκ団結小屋に関連する意思表明としては、第四インターθ現闘団反抗の昭和五八年五月一七日付けの機関紙「槌と鎌」第三八三号(乙一九六の11)において、「κ小屋新築 用地内前線基地建設を闘いとる! …旧κ小屋は七七年κ要塞建設の燃えるような闘いに向け建設されました。その後三、二六―五、二〇の歴史的な勝利を闘い抜き、二期用地内に厳として立ち続けてきました。そして今…その新たな闘いの出撃拠点として新築されました。新しい小屋は…二階からは憎っくき空港の管制塔が目前にせまって望見され、…文字通り用地内前線基地としての格好の位置にあります。との意思表明が行われ、また、同月二三日付けの機関紙「世界革命」第七八五号(乙一九六の11)において、「五月一三日、インターκ団結小屋の落成式が行われた。…建っている場所は二期工区・横風用滑走路予定地のどまん中だ。…二期工区公団用地に攻めこみ、廃港をめざす新たな闘いの拠点が建設されたのだ。」との意思表明が行われ、また、インターκ団結小屋とともに建設された監視櫓についても、昭和六三年九月五日付けの機関紙「世界革命」第一〇五九号(乙一九六の11)において、「θ二期実力阻止へ用地内の拠点整備 …C滑走路予定地のほぼまん中に位置するκ監視鉄塔は、昨年来の二度の建設工事によって十六メートルから三十一メートルの高さに強化されてきた。そうした工事と闘いは、あくまでも二期工事を実力で阻止していく反対同盟農民と支援の労働者、学生の決意を満天下に明らかにするものであった。…こうして建てられたκ監視鉄塔は、P29派反対勢力全体の用地内拠点として位置してきたし、二期用地内全体を一望できる文字どおりの監視鉄塔としての役割を果たしてきた。…鉄塔改修工事は、こうした鉄塔の果たしている意義を、より充実したものにしようとすることであった。」との意思表明が行われた。

(2) 戦旗荒派の意思表明状況

戦旗荒派は、その機関紙「戦旗」において、「…故に全てのθ勢力は、θ闘争の大義性、必勝不敗性を断固として確信し、二期決戦の勝利を闘い取ろう。我が戦旗・共産同はその最先頭に立ち、独自の戦争の論理に則って二期阻止人民戦争を闘いぬく決意である。」(平成元年六月二五日付け第六三八号、乙二一五)旨の意思表明を行っている。

(3) プロ青同の意思表明状況

プロ青同は、その機関紙「統一」において、「…二期工事を撃つ実力闘争を的確に貫徹すること。そのためにも青年先鋒隊の強化、拡大をさらに推し進めることである。」(昭和六三年三月一〇日付け第三〇三号、乙一九六の11)、「一坪共有地の全人民的防衛体制、空港包囲の大衆的闘いで強制収用攻撃を粉砕せよ。」(昭和六三年六月三〇日付け第三一〇号、乙一九六の19)、「用地内防衛・実力闘争陣形を強化しよう! …政府・空港公団による圧倒的な物量・暴力を背景とした三年間の様々な攻撃に対して、話し合い・妥協する事なく用地内反対同盟を先頭に、全国のθ勢力が一丸となり実力闘争路線を堅持し、戦い抜かなければならない。このことは、七一年の二度にわたる強制収用攻撃に対するν十字路戦闘、七八年度内開港に対する三・二六管制塔占拠闘争に代表される闘いの意義について訴えることである。第一次強制収用阻止に向けて反対同盟は…考えられるあらゆる闘いを展開した。」(平成元年三月一〇日付け第三二四号、乙一九四)との意思表明を行い、また、プロ青同団結小屋に関しては、「用地内に点在する共有地、私有地を砦として闘っていく。」(昭和六二年七月五日、現地集会におけるプロ青同所属者の発言、乙一九六の18)との意思表明を行っている。

(4) 統一共産同の意思表明状況

統一共産同は、その機関紙「現代革命」において、「二十二年の闘いから学び労働者階級の戦闘精神うちたてよう! …いまや問われているのは支援、労働者階級の大衆的・攻勢的な反権力実力闘争の再構築である。…θ闘争の現段階の困難は、支援、労働者階級の大衆的実力闘争がかっての勢いをうしない、闘争全体が反対同盟農民の戦闘精神と奮闘に依存する構造になっている点にある。この現状を突破するためには、労働者・人民自身がθ闘争の全国的活性化とθ現地への圧倒的な大衆的動員をかちとることである。」(昭和六三年三月二二日付け第一四〇号、乙一九六の11)、「われわれは、反対同盟・農民との信頼関係を基礎とした団結をこそうち固め、強制収用攻撃粉砕、二期阻止・空港廃港へ全力を傾注せねばならない。」(平成元年七月二八日付け第一五四号、乙一九二)との意思表明を行い、また、統一共産同団結小屋に関しては、「…反対同盟、用地内農民に対するさらなる重圧、…我が現闘団の団結小屋、労農合宿所、戦旗・共産同団結小屋の孤立化を、ねらっている。…だが、われわれは一歩もひかない。」(平成元年一月二三日付け第一四九号、乙一九六の27)との意思表明を行っている。

2  前記1(四)の事実によれば、第四インター、戦旗荒派及びプロ青同は、昭和五三年三月二六日の新空港及び同管制塔に乱入する事件を起こしたばかりでなく、平成元年の使用禁止命令発出時までに、新空港告示区域内の諸施設及び新空港の離陸若しくは着陸の安全を確保するために必要な諸施設に対し、前記1(四)の①、②、⑧及び⑯の違法行為を繰り返しており、かかる違法行為が、いずれも新空港若しくは航空保安施設の設置若しくは管理を阻害し、又は新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する本法二条一項に該当する行為として、暴力主義的破壊活動等に該当することは明らかである。

そして、前記1(四)の事実のうち、第四インター及び戦旗荒派の行った③及び④については、その破壊活動の対象はパイプライン施設という新空港の機能を維持、確保する上で必要不可欠な施設ではあるものの、機能確保施設について政令の定めがされていない以上、右のような違法行為をもって本法二条一項にいう暴力主義的破壊活動等に当たるということはできないが、このような破壊活動の最終的な対象が本法二条一項において暴力主義的破壊活動等の向けられる対象として規定されている新空港自体にあることは明らかであること、また、戦旗荒派、統一共産同等の行った前記1(四)の⑤、⑦、⑨ないし⑭の行為は、いずれも新空港の二期工事の建設事業の実施機関である空港公団工事局や、新空港建設の見返り事業として実施されている成田用水の工事を対象とするものであり、それ自体は、新空港の機能を維持、確保する上で必要不可欠な施設等に対する違法行為とはいえないけれども、これらは、新空港の建設に関連する工事を違法な実力行使で阻止しようとする行為であるし、空港公団工事局は、新空港の敷地内に存するものであり、情勢の推移いかんによっては、その破壊活動の対象が新空港若しくはその航空保安施設に及ぶおそれも十分考えられること、さらに、前記1(三)の本件各工作物への出入り状況等からすれば、第四インター、戦旗荒派、プロ青同及び統一共産同の四セクトは、互いに日常的な交流があり、その活動方針等は共通するものがあると認められる上、前記1(五)の(1)ないし(4)の意思表明状況に照らせば、これらの四セクトは、いずれも新空港に反対する立場から、新空港の二期工事や、それに向けての土地収用等を実力で阻止して、新空港を廃港にする意思のもとに団結し、右意思に基づき前記の各違法行為を敢行し、しかも、今後とも、右目的達成のためには、適法、違法を問わず、実力行使をも辞さない意思を繰り返し表明していることが認められるから、かかるセクトに所属する者は、現に暴力主義的破壊活動等を行うとともに、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者として(第四インター、戦旗荒派及びプロ青同)、あるいは暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者として(統一共産同)として、いずれも暴力主義的破壊活動者に該当するというべきである。

なお、被告は、前記1(四)の①、②、⑧及び⑯以外の各行為も、本法二条一項の暴力主義的破壊活動等に該当すると主張するけれども、前述のところからして採用し難い。

3  そして、前記1の(二)及び(三)の認定事実からすれば、本件各工作物は、統一共産同団結小屋の一部を除き、いずれも暴力主義的破壊活動者と認められる前記各セクト、すなわち、第四インター、戦旗荒派、プロ青同及び統一共産同に所属する者らが中心となって建設され、その管理についても、第四インター、プロ青同及び統一共産同に所属する者ら数名が常駐することによって行われ、同セクトに所属する者らが頻繁に出入りしていたこと、その規模や構造は、いずれも数十名以上の者が収容可能なものであり、その外観も、入口に大きな鉄門扉が設けられたり(旧労農合宿所)、構内に監視小屋付きの鉄骨製櫓(インターκ団結小屋)や孟宗竹製の見張り台(統一共産同団結小屋)があったり、周囲に鉄板やトタンの塀を巡らせる(インターκ団結小屋、プロ青同団結小屋)など、いずれも通常の家屋等とはかなり様相を異にするものであること、また、前記2のとおり、前記各セクトは、統一共産同を除き、いずれも昭和五三年から平成元年にかけ、暴力主義的破壊活動等を継続して実行してきたものであるし、統一共産同についても、新空港の建設に関連する工事に対し、戦旗荒派と共同歩調をとって違法な実力行使をしてきた上、同派のみならず、第四インター及びプロ青同とも日常的な交流があり、その活動方針等において、共通する面があると認められること、そして、この間、前記各セクトは、いずれもその機関紙において、また、θの現地集会における発言の中で、新空港の二期工事及びそれに向けての土地収用を実力で阻止し、新空港を廃港にすることを呼びかけるとともに、旧労農合宿所やインターκ団結小屋をその闘争の拠点とすることを明らかにし、情勢の推移いかんでは、本件各工作物にも関連して、暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような実力行使をも辞さない意思を表明してきたものであるから、これらを総合して判断すれば、平成元年の使用禁止命令発出当時、本件各工作物について、いずれも本法三条一項一号の「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供されるおそれがあったというべきである。

4(一)  原告らは、本法における使用禁止命令は、具体的、客観的に、過去において暴力主義的破壌活動をなした者らが、本件各工作物を拠点として、同所を暴力主義的破壊活動に関連した集合に供していたことがある場合で、現在もなお差し迫った明白な危険が認められるときに初めて認められるべきである旨主張するが、前述のように、本法に基づく工作物使用禁止命令は、新空港等の設置、管理等の安全を確保するという国家的、社会経済的、人道的見地からの極めて強い要請に基づき、高度かつ緊急の必要性の下に発せられるものであることに照らせば、本法における使用禁止命令発出の要件を原告らが主張する場合に限定すべき理由はないと考えられるから、右主張は採用できない。

(二)  また、原告らは、被告が、第四インター、プロ青同又は統一共産同の暴力主義的破壊活動等として主張する事実があったとしても、これらは昭和六〇年ころまでの活動にすぎないし、原告反対同盟は、P28派支援セクトとはもちろん、平成元年には戦旗荒派とも絶縁しているのであるから、平成元年の使用禁止命令発出時において、本件各工作物が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれを認めるに足りる事由は存在していない旨主張する。

たしかに、前記1で認定した事実に加えて、証拠(証人P19、証人P20、原告P1、原告P3、原告P5、原告P6、原告反対同盟代表者P21)及び弁論の全趣旨によれば、原告反対同盟は、昭和五八年三月八日に、中核派、革労協、戦旗両川派等が支持する反対同盟P28派(以下「P28派」という。)と、戦旗荒派、第四インター、プロ青同等が支持する原告反対同盟(P29派)とに分裂し、以後、両派間において交流はなく、かえって敵対的な関係に立つこともあったこと、平成元年七月ころには、戦旗荒派は原告反対同盟と絶縁状態となり、それ以後、同派は、ほとんど本件各工作物に出入りせず、活動を共にすることもなかったこと、また、プロ青同については昭和六一年以降、第四インター及び統一共産同についてはそれ以前からも、暴力主義的破壊活動等に該当する行為を行った事実は確認されていないことが認められる。

しかし、本件各工作物が本法三条一項一号の「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供されるおそれがあるか否かの判断に当たり、P28派及びそれを支援する各セクトの行動や意思表明を考慮していないことは前述のとおりであるし、右判断は、前記三3のような諸事情を総合的に考慮した上での事前予測に基づきなされるものであるから、その認定に当たり、現在、当該工作物に常駐ないし出入りしている者の所属するセクトの過去の活動状況等を判断資料として考慮することは当然である。そして、その考慮すべき活動状況等には、それ自体は暴力主義的破壊活動等に該当しないものであっても、それにつながるような破壊活動や違法な実力行使も含まれるというべきであり、また、その考慮すべき期間についても、それらのセクトが、右のような活動や実力行使を今後も行うおそれがないか否かを十分に見極めるだけの期間が必要とされることは明らかである。

そして、原告反対同盟を支持してきた戦旗荒派は、昭和五三年以降、平成元年二月ころまで、新空港の二期工事等を実力で阻止する立場から暴力主義的破壊活動等を繰り返していたものであるし、右原告を支持する統一共産同も、昭和六二年四月ころまで、そのような戦旗荒派と違法な実力行使につき共同歩調をとっていたこと、また、第四インター及びプロ青同も、昭和五六年一月あるいは昭和六〇年九月ころまで、暴力主義的破壊活動等につながるような破壊活動や違法な実力行使を繰り返してきたものであるし、これら四セクトは、平成元年七月までは、互いに日常的な交流を有し、活動方針を共通にする面があったこと、さらに、右各セクトは、現実に暴力主義的破壊活動等やそれにつながるような違法行為を行っていない時期においても、その発行する機関紙等において、新空港の二期工事等を実力で阻止し、新空港を廃港にするという目標を継続して掲げ、しかも、過去に自らが行った破壊活動等を賞賛するなど肯定的に評価する意思表明や、本件各工作物を右実力闘争の拠点として位置付ける意思表明を繰り返していたことに照らせば、たとえ、平成元年の使用禁止命令の発出前の数年間において、戦旗荒派を除く右各セクトについて、暴力主義的破壊活動等を行った事実が認められないからといって、直ちに、右命令の発出当時、本件各工作物について、本件三条一項一号の「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供されるおそれがなかったとはいえない。

(三)  なお、原告らは、被告の指摘するところの暴力主義的破壊活動の意思の表明なるものは、実際には単なる政治的活動に関する意見表明にすぎず、それらが思想、政治的信条、主張の表明として、象徴的あるいは誇張的な表現が使用されることはむしろ常態であり、そのことをもって暴力主義的破壊活動の意思の表明とはいえないと主張する。

たしかに、前記一(五)認定のような意見表明は、政治的活動に関する意見表明の常として誇張的、強調的な表現も多く用いられていると認められ、そのすべてを文字通り受け取ることはできないと考えられるが、前記の四セクトが、いずれもその機関紙において、新空港の二期工事及びそれに向けての土地収用を実力で阻止し、新空港を廃港にすることを呼びかけるとともに、旧労農合宿所やインターκ団結小屋をその闘争の拠点とすることを明らかにし、情勢の推移いかんでは本件各工作物にも関連して、適法、違法を問わず、実力行使をも辞さない意見を表明してきたことは、その記事の内容全体から明らかに読みとれるのであるから、右原告らの主張する点を考慮しても、前記2及び3の各判断が左右されるものではない。なお、この点は、後記認定の平成二年以降の機関紙等における意思表明の解釈についても同様である。

5  以上のとおりであるから、平成元年の使用禁止命令は適法である。

五  平成二年の使用禁止命令の適法性について

1  証拠(乙二三〇、二三二、二三三、二五三、二五六、二七三の1ないし22)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件各工作物の構造及び外観等の変化

(1) 旧労農合宿所は、平成元年の使用禁止命令が発せられた後の同年一〇月二二日午後三時ころ「仮宿泊所」から出火し、「労農合宿所」、「κ農業研修センター」と順次延焼して、午後四時過ぎまでに右三棟が全焼した。このため、同月二三日午後から翌二四日未明にかけて、原告反対同盟及びこれを支援する各セクトに所属する者ら約五〇名により、旧労農合宿所跡地付近に平屋建組立式仮設ハウス一棟を建設し、改めて「労農合宿所」とした(これと、焼け残った工作物の全体が「新労農合宿所」である。)。再建された「労農合宿所」は、面積約七六平方メートルであり、焼け残った第三次団結小屋(図書館)と合わせ、依然、かなりの人員収容力を有する(乙二七三の3、4)。

(2) インターκ団結小屋においては、平成元年の使用禁止命令が発せられた後の平成二年二月一二日に、約一七〇人が参加して「二・一二κ団結小屋の封鎖・除去を許さない現地緊急行動」が開催された際、鉄骨製櫓に「大地とともに生きる」と大書した看板が掲げられたが、それ以外には、その構造及び外観等に特段の変化はなかった(乙二七三の8、9)。

(3) プロ青同団結小屋は、平成元年の使用禁止命令が発せられた後、その構造及び外観等に特段の変化はなかった(乙二七三の14)。

(4) 統一共産同団結小屋は、平成元年の使用禁止命令発出以降に「成田治安法適用弾劾!」の看板が新たに掲げられたが、それ以外には、その構造及び外観等に特段の変化はなかった(乙二七三の19)。

(二) 本件各工作物の常駐者、出入者等

(1) 新労農合宿所(乙二七三の4)

新労農合宿所には、平成二年八月現在、P1(第四インター)、P2(第四インター)、P9の三名が常駐しており、平成元年九月二〇日から平成二年六月二六日までの間に右常駐者を含め、第四インター八名、プロ青同四名、統一共産同二名等、各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計二三名の出入りが確認されているところ、このうち七名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に同合宿所で二人以上の右各セクト所属者等が同時に二〇回確認されている。

(2) インターκ団結小屋(乙二七三の9)

インターκ団結小屋には、平成二年八月現在、P10、P3、P4のいずれも第四インターに所属する三名が常駐しており、平成元年九月一九日から平成二年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター八名、プロ青同五名、統一共産同二名等の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一九名の出入りが確認されているところ、このうち五名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に五回確認されている。

また、インターκ団結小屋では、平成二年二月一二日に、約一七〇人が参加して「二・一二κ団結小屋の封鎖・除去を許さない現地緊急行動」が開催されたほか、同年三月二五日には、インターκ団結小屋敷地内において、第四インターを中心とするセクト所属者ら約二〇〇名が参加して「P17君を囲む会」が開催され、その際参加者らは、「二期工事を実力で阻止するぞ!」「成田治安法粉砕」等のシュプレヒコールを行った。

(3) プロ青同団結小屋(乙二七三の15)

プロ青同団結小屋には、平成二年八月現在、P12、P8、西浦政弘、P13、P14、P7のいずれもプロ青同に所属する六名が常駐していたとみられ、平成元年九月二六日から平成二年六月三日までの間に右常駐者の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にプロ青同団結小屋で二人以上の右セクト所属者等が同時に四回確認されている。

(4) 統一共産同団結小屋(乙二七三の20)

統一共産同団結小屋には、平成二年八月現在、P6、P15、のいずれも統一共産同に所属する二名が常駐していたとみられ、平成元年九月二七日から平成二年六月二五日までの間に右常駐者を含め、統一共産同四名、プロ青同一名の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者一名の計六名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に統一共産同団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に六回確認されている。

(三) 各セクトの意思表明の状況

(1) 第四インター

第四インターは、その機関紙「世界革命」において、「…強制収用を許さず、二期工事を阻止し、空港廃港まで共に戦わん。」(平成元年一〇月九日付け第一一一三号、乙二三〇)、「成田治安法適用を許すな ~κ団結小屋を全力で守り抜こう~ …κ団結小屋をめぐる状況は、依然緊迫しており、…臨戦体制を堅持し続けなければならない。用地内農民との団結を強め、どうかつを許さず治安法攻撃を打ち砕いていく全国的な闘いと現地闘争体制を強化しなければならない。」(平成二年三月二六日付け第一一三六号、乙二七三の10)、「強制収用を許さず、二期阻止へ闘いぬこう」「成田治安法をはね返そう!」「袋小路に入った二期工事を葬り去るねばり強い闘いへ」(平成二年四月二日付け第一一三七号、乙二五六)、「…そして、P17同志のあいさつだ。『十一年九カ月の獄中生活を経て、昨年十二月に帰ってきました。やれと言われれば、もう一度管制塔に上がります』と開口一番。八月三日に出獄するP22同志へのいっそうの支援を訴えながら『θの地形は大分変わったが闘う人々の心は変わっていない。…』」(平成二年三月二五日、「P17君を囲む会」における発言・同年四月二日付け第一一三七号、乙二七三の9)との意思表明をし、また、インターκ団結小屋に関しては、平成二年二月一九日付け第四インター機関紙「世界革命」一一三一号(乙二七三の9)において、「…κ団結小屋を守り続けているインターθ現闘団の仲間が、封鎖・除去の攻撃を許さず闘いぬく決意を、力強く表明した。『…この小屋が封鎖されれば、今度はλが敵の攻撃の矢面に立つことになる。この小屋を守る闘いは、λ部落を守るためにも重要だ』…全国からκにかけつけ、小屋を守りぬく闘いをさらに強化しよう。」との意思表明をしている。

(2) プロ青同

プロ青同は、その機関紙「統一」において、「反対同盟とともに実力闘争で二期阻止!廃港へ …二四日の闘いが勝利したのは、…青年先鋒隊を初めとする支援勢力がθ現地に集中し、反対同盟との共同した闘いを実現したことである。…政府・空港公団の新戦略に対して、今回の勝利に続き反対同盟・支援一丸となった現地実力闘争態勢を堅持する必要がある。…二期阻止・廃港に向け全力で闘い抜こう。」(平成元年一〇月三〇日付け第三三八号、乙三三二、二七三の15)との意思表明をしている。

また、新労農合宿所に関しては、その再建に際し、「十月二四日、…空港公団・警察権力の妨害・介入をはねのけ労農合宿所の再建を勝ち取った。…労農合宿所再建の勝利に続き、団結小屋=闘争拠点を防衛し、敵の新戦略を打ち砕く現地攻防を闘い抜こう。」(平成元年一〇月三〇日付けプロ青同機関紙「統一」三三八号、乙二三二、二七三の15)と、さらに、プロ青同団結小屋に関しては、「…九月に治安法が適用された、インターκ、プロ青同、労闘・労活評、労農合宿所の四つの団結小屋から決意表明。…デモは、…θの大地に、治安法適用粉砕、強制収用粉砕の声を響き渡らせた。」(平成元年一〇月三〇日付けプロ青同機関紙「統一」第三三八号、乙二三二、二七三の15)等の意思表明を行っている。

(3)統一共産同

統一共産同は、その機関紙「現代革命」において、「事業認定二十年目の闘いを攻勢的に闘い、真に強制収用―二期工事断念の勝利をひきよせる実力闘争陣形をつくりだそう!…事業認定失効を高らかに宣言し、二期工事粉砕、空港廃港に向けた闘いを構築しよう!」(平成元年一一月一一日付け第一五七号、乙二三三、二七三の20)、「κ団結小屋をはじめとする用地内団結小屋への封鎖・破壊を許さない大衆的抵抗闘争を闘いぬこう。全国から緊急のθ現地結集の体制を強化し、成田治安法攻撃を粉砕せよ!」(平成二年三月一七日付け第一六〇号、乙二五三)との意思表明を行い、また、本件各工作物に関連して、「権力・公団の労農合宿所破壊・占拠を実力で撃退す! …反対同盟・支援は今回の合宿所再建―共有地強奪阻止の闘いの中で、一丸となり、それぞれの役割りを存分に担い切り、一層の団結をうち固めた。…成田治安法適用による団結小屋撤去の策動を、断固たる実力闘争で粉砕しよう。」(平成元年一一月一一日付け第一五七号、乙二三三、二七三の20)、「…団結小屋防衛の闘いは、決定的に重要である。この闘いは何よりも、権力―成田治安法に抗し、自らの活動拠点の防衛と二期攻撃そのものとの戦闘である。」(平成二年二月一〇日付け第一五九号、乙二七三の20)との意思表明を行っている。

(四) 平成元年の使用禁止命令が発せられて以降、平成二年の使用禁止命令が発せられるまでの間、前記各セクトによる暴力主義的破壊活動等やそれにつながるような違法行為、あるいは新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を行った事実は認められない。

2  前記四1で認定した事実に加えて、右1の事実によれば、平成元年の使用禁止命令発出時以降、平成二年の同命令発出までの間、本件各工作物に常駐ないし出入りしていた者の所属セクトである第四インター、プロ青同及び統一共産同のうち、第四インター及びプロ青同は、昭和五六年一月あるいは昭和六〇年九月ころまで、自ら暴力主義的破壊活動等や、新空港の機能を維持、確保する上で必要不可欠な施設に対する破壊活動を繰り返しており、また、統一共産同も、昭和六二年四月ころまで、暴力主義的破壊活動等を継続してきた戦旗荒派と共同歩調をとって、新空港の建設に関連する工事に対し、違法な実力行使をしてきた上、本件各工作物への出入り状況等からして、平成元年から平成二年にかけても、第四インター及びプロ青同と日常的な交流があり、その活動方針等を共通にする面があったと認められること、そして、第四インター、プロ青同及び統一共産同は、いずれも新空港の二期工事や、それに向けての土地収用等に反対する立場から、過去に、適法、違法を問わず、右建設工事等を実力で阻止し、新空港を廃港にする旨の意思表明を繰り返していた上、平成元年の使用禁止命令発出後においても、同趣旨の意思表明を繰り返していたこと、しかも、この間、右各セクトにおいて、暴力主義的破壊活動等や、新空港の二期工事等に関連する違法な実力行使を放棄するとともに、あくまで平和的な方法により右建設工事等の阻止を実現するとの目標を公にするなど、過去の暴力主義的破壊活動等からの決別及び運動方針の転換を対外的に明確にしたなどの事情も認められないことなどに鑑みれば、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者は、いずれも、平成二年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者として、暴力主義的破壊活動者に該当するということができる。

もっとも、前記の各時期以降、右各セクトが実際に暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような実力行使を行ったり、平成元年八月以降、戦旗荒派など暴力主義的破壊活動等を行う傾向のあるセクトとの交流を持ったり、共闘関係を結んだなどの事実は認められないけれども、平成二年の時点において、そのような活動の沈静化及び右のようなセクトとの絶縁が定着したと見極めるだけの十分な期間が経過したとはいえないと考えられるし、前記各セクトの意思表明状況からすれば、新空港の二期工事等を実力で阻止するなどの従前の運動方針に、基本的に変更もみられないのであるから、これらの状況を総合して考えれば、前記各セクトが、新空港の二期工事等をめぐる諸情勢の進展あるいは運輸大臣や空港公団等の対応の変化等を機に、再び暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような実力行使に及ぶ可能性は決して低いとはいえなかったと考えられる。したがって、この点も、前記各セクトに所属するものが、暴力主義的破壊活動者に該当するとの前記判断を左右するものではない。

3  そして、前記四1(二)並びに五1(一)及び(二)からすれば、本件各工作物は、その一部を除き、いずれも暴力主義的破壊活動者である前記各セクト、すなわち、第四インター、プロ青同及び統一共産同に所属する者らが中心となって建設され、その管理についても、平成二年八月当時、第四インター、プロ青同及び統一共産同に所属する者ら数名が常駐することによって行われ、平成元年から平成二年にかけ、右各セクトに所属する者らが頻繁に出入りしていたこと、また、本件各工作物のうち、旧労農合宿所は火災により焼失したものの、新たに建設された新労農合宿所も、依然としてかなりの人員を収容可能なものであるし、その他、インターκ団結小屋、プロ青同団結小屋及び統一共産同団結小屋の構造については、平成元年の使用禁止命令の発出後も変化がなく、通常の家屋等とはかなり様相を異にするものであること、また、前記2のとおり、前記各セクトは、統一共産同を除き、いずれも昭和五三年から昭和六〇年九月にかけ、暴力主義的破壊活動等や、それにつながるような違法行為を継続して実行してきたものであるし、統一共産同についても、昭和六二年四月ころまで、新空港の建設に関連する工事に対し、戦旗荒派と共同歩調をとって違法な実力行使をしてきた上、平成二年当時、第四インター及びプロ青同とも日常的な交流があり、その活動方針等を共通にする面があったと認められること、そして、この間、前記各セクトは、いずれもその機関紙において、また、θの現地集会における発言の中で、新空港の二期工事及びそれに向けての土地収用等を実力で阻止し、空港を廃港にすることを呼びかけるとともに、旧労農合宿所やインターκ団結小屋をその実力闘争の拠点とすることを明らかにし、情勢の推移いかんでは、本件各工作物にも関連して、暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような実力行使をも辞さない意思を表明してきたものであるから、これらを総合して判断すれば、平成二年の使用禁止命令発出当時、本件各工作物について、本法三条一項一号の「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供されるおそれがあったというべきである。

4  以上のとおりであるから、平成二年の使用禁止命令は適法である。

六  平成三年の使用禁止命令の適法性について

1  証拠(乙二八八の1ないし25)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件各工作物の構造等の変化について

本件各工作物の構造及び外形は、平成二年の使用禁止命令発出後、インターκ団結小屋について、平成二年九月下旬ころから同年一〇月二一日までの間に、第四インターに所属する者が中心となり、その外壁の一部を解体して「案山子亭」と称する農作業小屋(間口約三・六メートル、奥行約七・二メートル、面積約二六平方メートル)が建設されたほかは、新労農合宿所、プロ青同団結小屋及び統一共産同団結小屋については変化がなかった(乙二八八の3、4、9、10、15、16、21、22)。

(二) 本件各工作物の常駐者、出入者等

(1) 新労農合宿所には、平成三年六月現在、第四インターに所属するP1、P2の二名のほか、P9の計三名が常駐しており、平成二年九月一九日から平成三年六月三〇日までの間に、右常駐者を含め、第四インター五名、プロ青同二名等の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一〇名の出入りが確認されているところ、このうち三名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の右各セクト所属者等が同時に三回確認されている(乙二八八の4)。

(2) インターκ団結小屋には、平成三年六月現在、P4、P10、P3のいずれも第四インターに所属する三名がその所在地に住民登録を有し、かつ、常駐しており、平成二年九月一九日から平成三年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター五名、プロ青同一名、統一共産同一名等の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一二名の出入りが確認されているところ、このうち三名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に七回確認されている(乙二八八の10)。

(3) プロ青同団結小屋には、平成三年六月現在、五名位が常駐していたとみられるが、氏名が判明している者として、プロ青同構成員として把握され、新空港反対闘争関連事件で検挙歴を有するP12がいた。また、平成三年三月一七日には原告反対同盟の全国集会参加のため、約四〇名がプロ青同団結小屋から出発した(乙二八八の16)。

(4) 統一共産同団結小屋には、平成三年六月現在、統一共産同に所属するP6、P15の常駐が認められており、平成二年九月一九日から平成三年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、統一共産同二名、プロ青同二名の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者一名の計五名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争での検挙歴を有するとともに、右期間内に統一共産同団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に一回確認されている(乙二八八の22)。

(三) 各セクトの活動及び意思表明の状況

(1) 第四インター(乙二八八の5別添疎明資料1ないし6)

第四インターは、その機関紙である「世界革命」において、「成田治安法再適用糾弾 二期工事を今すぐ中止せよ! 九月三十日、θ現地闘争本部前で『成田は違憲の巣、二期工事糾弾 考え直せ成田空港』と題して、総決起集会が開催された。…また八月二十四日には、インターκ団結小屋はじめ七カ所に、『使用禁止命令』の再適用を強行した。…七八年管制搭占拠闘争の〝首謀者〟として逮捕され、この八月三日に十一年五カ月振りに出獄したP22同志が、今後も反対同盟と共に闘う決意を表明した。」(平成二年一〇月八日付け第一一六二号)、「二期工事計画を破産に追い込みB・C滑走路建設を阻止しよう …一国の政府を相手に二十五年にもわたって守り続けた空港反対の大義が厳然として彼らの暴挙を実力で打ち砕いてきたのである。」(平成二年一二月三日付け第一一七〇号)、「『κ団結の砦』撤去糾弾! …κ団結小屋を守りぬこう λ団結砦の『除去』から始まった成田治安法による一連の攻撃で、ν団結会館、λ育苗ハウス、θ闘争会館、大清水団結小屋、そして今回と、すでに六カ所の団結小屋が破壊され、ιのP28派現闘本部は『封鎖』されている。さらに、κのP29派四カ所をはじめ、七カ所に『使用禁止命令』がかけられている。…成田治安法との攻防は、いよいよわがκ団結小屋をはじめとするP29派の団結小屋との対決局面に突入した。」(平成二年一二月一〇日付け第一一七一号)、「用地内で新たな闘い …κに点在する各団結小屋は使用禁止命令の再適用を受け、いまなお依然として封鎖・除去の攻撃にさらされている状況に変わりはない。成田治安法裁判を支え、各団結小屋の防衛にむけ、全力をあげて封鎖・除去を許さない運動を積み重ねていきたい。」(平成三年一月一四日付け第一一七五号)、「収用攻撃をはね返しκ団結小屋を守りぬけ …κインター団結小屋、反対同盟のシンボルとしてそびえ立つ鉄塔、そして新たに建設された案山子亭を守りぬき、P23さん、P20さんのたんぼに公団の手をつけさせない闘いを、団結小屋防衛の闘いと一体のものとして担うことが、われわれの任務である。」(平成三年二月二五日付け第一一八一号)、「成田治安法―強制収容と対決し二期阻止へ持続的闘いの強化を …反対同盟は断固として闘いぬいているが、大衆運動によって一挙に廃港に追い込む展望が打ち出せない状況の中で、いわゆる『協議会問題』など、反対運動の帰すうを左右しかねない重大な路線的問題が生じている…。」(平成三年三月二五日付け第一一八五号)との意思表明を行っている。

(2) プロ青同(乙二八八の5別添疎明資料7ないし11)

プロ青同は、その機関紙である「統一」において、「成田治安法の再適用を弾劾する! …私たちは、この悪法を許さず、反対同盟とともに、全国の闘う仲間とともに裁判闘争を闘い、そして団結小屋への『使用禁止命令』の拡大適用や、『封鎖』『除去』の攻撃には断固として闘う決意である。二期工事を阻止し、廃港まで力をひとつにして闘おう。」(平成二年九月一五日付け第三五六号)、「90年度概成は破産した 今こそ二期阻止を! …政府・公団が、反対同盟農民と支援の闘いによって、ますます追い詰められ、空港建設の展望を見失っていることはもはや明らかだ。状況は我々の側に有利に働いている。今こそ、政府・公団に二期断念を強制する攻勢的な闘いが必要である。」(平成二年一〇月一五日付け第三五八号)、「『鎮魂祭』絶対反対かかげθ現地緊急行動 …総括集会では、首都圏労学実の発言をうけ、あくまで敵の『話し合い』攻撃に対決し二期阻止、廃港にむけ闘い抜くことを確認しこの日の行動を終えた。」(平成三年一月一日付け第三六三号)、「政府・公団のもくろみを粉砕し、原則的闘いの発展を! …我々は、この政府・公団のもくろみを粉砕するために闘わなければならない。『協議会』『公開シンポジウム』による『話し合い・条件交渉』への取り込み策動粉砕をはっきりと掲げ闘うことが求められている。この闘いをしっかりと貫徹し、同時に原則的闘いの前進のために奮闘しなければならない。…三・一七現地集会に『協議会反対、公開シンポ反対』を掲げ、二期阻止の原則的・持久的闘いの発展のために結集しよう。」(平成三年二月一五日付け第三六五号)、「夏期一時金カンパを訴える …正念場を迎えているθ闘争を、地域振興協議会や公開シンポジウムに反対して、二期工事阻止を掲げて闘います。」(平成三年六月一五日付け第三七二号)等と意思表明をした。

(3) 統一共産同(乙二八八の23別添疎明資料1ないし5)

統一共産同は、その機関紙である「現代革命」において、「帝国主義の『のど元』で闘う―9・30現地へ― …このようなブルジョア法の原則からもはみ出すファッショ法成田治安法の存在と恣意的運用を絶対に許すことはできない。このような法律とは断固闘う決意である。」(平成二年九月二二日付け第一六五号)、「『地域振興連絡協議会』路線反対を鮮明に『話し合い(買収)』拒否貫く用地内農民連帯・防衛の全国運動をつくりだそう! …われわれが『協議会』に反対する理由は、すでに表明してきた立場とともに、第一は、自力自闘(実力)で闘いぬくθ闘争の原点の放棄である。…このような慰霊祭に参加することは、二十四年に及ぶ空港反対闘争を冒とくし、P24君やP25君の闘いと精神を自らふみにじることであり、それはもはや思想的腐敗といわざるをえない。」(平成二年一二月八日付け第一六七号)、「P25裁判上告弾劾! 『協議会』路線粉砕 『公開シンポジウム』参加に反対しよう …いずれにしても、われわれは二月に予定されている『第一回シンポ』への参加に反対である。『地域振興連絡協議会』路線を粉砕しよう。」(平成三年一月一二日付け第一六八号)、「3・17 〝新たな決意で闘いぬこう!〟 θ現地集会に結集を …そしてわれわれに今求められているのは何よりもまず敵権力に対する自らの階級的、独自的闘いである。そのことを通じてしかθの現状を突破できないし、θ闘争の前進も勝ち取れないのでないか。」(平成三年二月二一日付け第一六九号)、「『協議会』による公開シンポに反対する共同声明 …『協議会』や公開シンポと対決し、θ闘争の原則的発展、公然とした大衆運動の確立・強化による闘いの前進こそが私たちに求められている。…θ闘争の地平を堅持し、政府・公団の二期攻撃と対決する大衆運動の発展によって二期阻止の勝利を勝ち取るために、共に闘い抜こう。」(平成三年三月二〇日付け第一七〇号)との意思表明を行った。

(四) なお、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトが、平成二年の使用禁止命令発出後、本法の暴力主義的破壊活動等に該当する行為やそれにつながるような違法行為、あるいは新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を行った事実は認められない。

2  前記五の2のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者は、いずれも、平成二年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者として、暴力主義的破壊活動者に該当していたところ、右1の事実からすれば、右各セクトは、本件各工作物への出入り状況等からして、平成二年から三年にかけても、相互に交流があり、その基本的活動方針を共通にしていたと認められること、そして、右各セクトは、いずれも、新空港の二期工事や、それに向けての土地収用等に反対する立場から、過去に、適法、違法を問わず、新空港の建設を実力で阻止し、新空港を廃港にする旨の意見表明を繰り返していたこと、しかも、この間、右各セクトにおいて、暴力主義的破壊活動等や、新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を自ら放棄するとともに、あくまで平和的な方法により右建設工事等の阻止を実現するとの目標を公にするなど、過去の暴力主義的破壊活動等からの決別及び運動方針の転換を対外的に明確にした事実も認められないことを併せ考えれば、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者は、いずれも、平成三年当時においてもなお、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者といわざるを得ず、これらの者は、暴力主義的破壊活動者に該当するということができる。

もっとも、昭和六二年四月ころ以降、前記各セクトが実際に暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような実力行使を行ったり、平成元年以降、戦旗荒派など暴力主義的破壊活動等を行う傾向のあるセクトとの交流を持ったなどの事実は認められないけれども、平成三年の時点においても、未だそのような活動の沈静化及び右のようなセクトとの絶縁が定着したと見極めるだけの十分な期間が経過したとは必ずしもいえないと考えられるし、前記各セクトの意思表明状況からすれば、新空港の二期工事等を実力で阻止するなどの従前の運動方針は、その実力行使を強調する度合いは次第に弱まってきているとはいえ、大幅な変更はみられないのであるから、これらの状況を総合して考えれば、前記各セクトが、新空港の二期工事等をめぐる諸情勢の進展あるいは運輸大臣や空港公団等の対応の変化等を機に、再び暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような実力行使に及ぶ可能性は決して低いとはいえなかったと考えられる。したがって、この点も、前記各セクトに所属するものが、暴力主義的破壊活動者に該当するとの前記判断を左右するものではない。

3  そして、前記四1(二)、五1(一)及び(二)並びに右1(一)からすれば、本件各工作物は、暴力主義的破壊活動者である前記各セクト、すなわち、第四インター、プロ青同及び統一共産同に所属する者らが中心となって建設されたものであり、その管理についても、平成三年六月当時、第四インター、プロ青同及び統一共産同に所属する者ら数名が常駐することによって行われ、平成二年から三年にかけ、同セクトに所属する者らが出入りしていたこと、また、本件各工作物の構造等については、平成二年の使用禁止命令の発出後も、インターκ団結小屋に「案山子亭」と称する農作業小屋が建設されたほかには変化がなく、依然、かなりの人員収容力を有し、また、その外観も、通常の家屋等とはかなり様相を異にするものであることに加えて、前記2及び3のとおり、右各セクトが、昭和六〇年あるいは昭和六二年ころまで、暴力主義的破壊活動等やそれにつながる破壊活動、あるいは、新空港の建設関連工事に対する違法な実力行使を繰り返してきた上、平成三年当時も、相互に交流があり、その基本的活動方針を共通にしていたこと、そして、この間、右各セクトは、いずれも、その機関紙において、新空港の二期工事等を実力で阻止することを呼びかけるとともに、本件各工作物を闘争の拠点とすることを明らかにし、情勢の推移いかんでは、本件各工作物にも関連して、暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような実力行使をも辞さない意思を表明してきたことなどを総合して考えれば、平成三年の使用禁止命令発出当時、本件各工作物は、本法三条一項一号の多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれがあったものと認められる。

4  したがって、平成三年の使用禁止命令は適法である。

七  平成四年の使用禁止命令の適法性について

1  証拠(乙三〇八の1ないし25)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件各工作物の外観等の変化(乙三〇八の3、4、9、10、15、16、21、22、弁論の全趣旨)

本件各工作物の構造及び外形については、統一共産同団結小屋に掲げられていた「成田治安法適用弾劾!」と書かれた看板が平成四年七月二二日までに撤去されたほかは、平成三年の使用禁止命令発出後、特段の変化はなかった。

(二) 本件各工作物の常駐者、出入者等

(1) 新労農合宿所には平成四年七月一日現在、第四インターに所属するP1、P2の二名が住民登録しており、また、出入りも認められ、平成三年九月一九日から平成四年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター七名、プロ青同一名、統一共産同一名等の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一〇名の出入りが確認されているところ、このうち三名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の右各セクト所属者等が同時に七回確認されている。

(2) インターκ団結小屋には、平成四年七月一日現在、P4、P3のいずれも第四インターに所属する二名がインターκ団結小屋所在地に住民登録を有し、常駐が認められ、平成三年九月一九日から平成四年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター五名及びこれらの者と行動を共にする者一名の計六名の出入りが確認されているところ、このうち三名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の右セクト所属者等が同時に一回確認されている。

(3) プロ青同団結小屋には、平成三年九月一九日から平成四年六月三〇日までの間に、プロ青同に所属する者計五名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にプロ青同団結小屋で二人以上の右セクト所属者等が同時に一回確認されている。

(4) 統一共産同団結小屋には、平成四年六月現在、統一共産同に所属するP6、P15の常駐が認められており、平成三年九月一九日から平成四年六月三〇日までの間に右常駐者を含め統一共産同二名、第四インター二名の各セクトに所属する者計四名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争での検挙歴を有するとともに、右期間内に同団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に五回確認されている。

(三) 各セクトの活動及び意思表明の状況

(1) 第四インター(乙三〇八の5別添疎明資料1ないし3)

第四インターは、その機関紙である「世界革命」において、「成田治安法使用禁止命令の再々適用を弾劾する! 九月十八日政府・運輸省は、κ部落内の四ケ所を含む七ケ所の団結小屋に対し、成田治安法による使用禁止命令を再び適用してきた。私達支援連絡会議は、政府.運輸省によるこの暴挙を絶対に許すことはできない。…私達支援連絡会議は、成田治安法を許さず反対同盟とともに裁判闘争に勝利し、団結小屋を守り抜いていく。二期工事を阻止し、廃港の日まで共に闘おう。」(平成三年一〇月七日付け第一二一一号)、「θ・二期工事阻止! 12・13討論集会に参加を …互いの意見の違いを乗り越えて反対同盟との団結を強化し、政府・運輸省の二期工事完成に向けた様々な攻撃に抗して行く事が必要であると考えます。」(平成三年一二月九日付け第一二二〇号)、「κ現闘本部で新春の闘いの集い 一月十三日、κの現地闘争本部で、反対同盟の九二年団結旗開きが開かれた。会場には、反対同盟と支援百人が集まり、九二年の闘いを二期阻止に向けて闘いぬくことを全体で確認した。」(平成四年一月二〇日付け第一二二五号)等の意思表明を行った。

(2) プロ青同(乙三〇八の5別添疎明資料4ないし6、三〇八の17別添疎明資料1ないし4)

プロ青同は、その機関紙である「統一において、「用地買収・強制収用と闘いぬこう …この一坪共有地を大衆的直接行動をはじめあらゆる手段で防衛するたたかいが、反対同盟にとっても支援勢力にとっても緊要の課題である。」(平成三年一二月九日付け第三八三号)、「4・5 θ現地集会へ …昨年の秋は、シンポに対する評価の分岐によって中止されたが、今回は集会名称からシンポの評価を外し、空港粉砕・二期工事阻止のスローガンの下に集会が行われる。θ闘争の勝利のためには現地闘争態勢の堅持が不可欠であると我々は主張してきた。」「強制収用阻止、二期断念へ追い詰めよう …今集会では、こうした政府・公団の二期工事による用地内農家を狙った追い出し攻撃に対決する姿勢を打ち出し、用地内農家とともに二期工事阻止を目指し闘い抜こう。」(平成四年三月二三日付け第三八九号)、「故P26君追悼の集い 管制塔占拠闘争の意義を今後のθに生かそう …同志P26の遺志を引き継ぎ、θ闘争の勝利をめざして闘い抜こう。」(平成四年四月二七日付け第三九一号)、「二期工事の既成事実の先行を許すな …政府・公団の口先の謝罪や確約とは裏腹な二期強硬策が用地内の農家の権利剥奪をしているのであり、断じて許すことはできない。」(平成四年六月八日付け第三九四号)等の意思表明を行った。

(3) 統一共産同(乙三〇八の23別添疎明資料1ないし3)

統一共産同は、その機関紙である「現代革命」において、「運輸相奥田発言弾劾! 『成田シンポ』反対! …何よりもまず、現に進められている二期攻撃、予想される強権発動に対する大衆的闘争陣型をこそ構築すべく努力せねばならない。」(平成三年一二月一日付け第一七七号)、「4/5θ現地集会へ! 労働者の隊列で結集しよう 反対同盟は、二月二十六日実行役員会で、4・5『空港粉砕、二期工事阻止』現地集会を決定した。『シンポ』にかかわりなく、反対同盟と敵政府・公団とは戦闘状態にある。われわれも、あくまで二期阻止・用地内農民を守り抜くべく、労農同盟建設の決意をもって全力で集会に結集せよ!」(平成四年三月二七日付け第一八〇号)、「第二ターミナルビルの供用開始を許すな …われわれは、断じてこのようなビル供用開始・ジェット自走化を許すことはできない。用地内農民の頑張りに連帯し、ビル供用を許さない闘いに全力をあげて取り組まねばならない。θと闘う労働者の隊列を早急に強化しよう。」(平成四年四月二五日付け第一八一号)等の意思表明を行った。

(四) なお、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトが、平成三年の使用禁止命令発出後、本法の暴力主義的破壊活動等に該当する行為やそれにつながるような違法行為、あるいは新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を行った事実は認められない。

2  前記六の2のとおり、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者は、いずれも、過去の活動状況や、その意思表明状況等からして、平成三年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者として、暴力主義的破壊活動者に該当していたというべきである。

しかし、前記四1(四)及び右1の事実からすれば、第四インター及びプロ青同の暴力主義的破壊活動等や、それにつながるような破壊活動は昭和六〇年九月が最後であり、統一共産同が、戦旗荒派と共同歩調をとって行った新空港建設関連工事への違法な実力行使も昭和六二年四月が最後であって、それ以降平成四年七月まで、約七年あるいは約五年が経過していること、また、平成元年二月まで暴力主義的破壊活動等を行ってきた戦旗荒派は、かつて原告反対同盟の活動を支援してきたものであるが、同年七月ころ、原告反対同盟と絶縁状態となり、その後、本件各工作物にも出入りしなくなって、前記各セクトとの、交流も途絶え、それ以降平成四年七月まで約三年が経過しており、この間、かつて原告反対同盟及び前記各セクトと行動を共にしていたP28派やそれを支援する各セクトとの共闘関係が復活する徴憑も見当たらなかったこと、これら年月の経過は、前記各セクトの活動が沈静化し、暴力主義的破壊活動等を行う傾向のあるセクトとの絶縁が定着したと見極める上で、一般的にみて十分な期間と考えられること、さらに、前記各セクトは、平成四年当時も、その機関紙において、国や空港公団との対決姿勢を打ち出しているとはいえ、実力行使を強調する度合いは薄らぎ、暴力主義的破壊活動等の容認に結び付くような意思表明も少なくなっている上、このような意思表明のほかには、前記各セクトが新空港の二期工事等に関し、現実に暴力主義的破壊活動等やそれにつながるような違法行為の実行に至ることを窺わせるような具体的徴憑も見当たらないことなどの諸事情が認められる。

これらの事実からすれば、第四インター、プロ青同及び統一共産同の三セクトが、暴力主義的破壊活動等や新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を自ら放棄するとともに、あくまで平和的な方法で右建設工事等の阻止を実現するとの目標を公にするなど、過去の暴力主義的破壊活動等からの決別及び運動方針の転換を対外的に明確にした事実が認められないことを考慮してもなお、右三セクトに所属する者が、平成四年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったとまではいえないと考えられるから、これらの者は、暴力主義的破壊活動者に該当しないというべきである。

なお、被告は、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性について判断するためには、使用禁止命令が発出されたことによる暴力主義的破壊活動等に対する防止効果をも考慮する必要があると主張するところ、たしかに、本件の使用禁止命令が本件各工作物に関連する暴力主義的破壊活動等を一定限度で抑止する効果を有したであろうことは推認されるものの、前記各セクトが過去に行ったとされる暴力主義的破壊活動等は、いずれも本件各工作物とは直接関わりのないものであるし、他に、前述のような前記各セクトの活動の沈静化が本件の使用禁止命令の効果であることを窺わせるような具体的状況も見当たらないのであるから、右被告の主張は理由がない。

そうすると、前記各セクトに所属する者が平成四年当時においても、本件各工作物に出入りし、また、相互にある程度の交流があったことは前記1認定のとおりであるけれども、これらの事実をもって、本件各工作物が、多数の暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者の集合の用に現に供され、又は供される蓋然性が高いとはいえないから、平成四年の使用禁止命令は、その発出の要件を欠いたものといわなければならない。

3  したがって、平成四年の使用禁止命令は、違法といわざるを得ないところ、前記2のような第四インター、プロ青同及び統一共産同の過去の活動状況及び平成四年当時の意思表明状況は、平成四年当時、右命令権者である運輸大臣において明らかに知り得たことなのであるから、右違法な使用禁止命令の発出について、過失があったというべきであり、被告は、右使用禁止命令を受けたことによって、本件各工作物の所有者及び管理者兼占有者が被った損害を賠償する責任がある。

4  本法に基づく使用禁止命令は、多数の暴力主義的破壊活動者が当該工作物を集合の用に供することを禁止するものであるが、このような命令が発せられた場合、当該工作物の所有者、占有者らは、その工作物に多数の者を自由に出入りさせたり、あるいはこれを集会等に利用するについて、それが許される使用であるか否かを自ら判断し、許されない使用に該当する可能性があれば、その使用を差し控えるなど、その自由な使用を一定の限度で制約されるのであるから、これによって、その団体あるいは個人が不利益を被ることは明らかである。また、右使用禁止命令を発出するということは、当該工作物の所有者、占有者らが、本法にいう暴力主義的破壊活動者に該当し、民主主義社会において許容されない暴力行為や違法な実力行使を行う団体あるいは個人であるとの印象を一般に植え付けるものであり、その所有者、占有者らの社会的信用、名誉が害される面のあることも否定できない。

なお、被告は、規制区域内に存在する工作物を多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供することは、そもそも許されない態様の使用なのであるから、このような使用の禁止をもって、法的に保護された利益の侵害とはいえないと主張するけれども、本件は、暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれがない場合に、それがあるとして命令が発せられた場合に、その所有者、占有者らが損害を被るか否かという問題なのであるから、右主張はそれ自体失当である。また、被告は、原告らが本件の使用禁止命令によって居住の自由等を制限されたことによる損害はないとか、原告らが使用を制約されると主張する精神的損害は、法律上保護すべき利益に当たらないとか主張するけれども、前記認定にかかる損害は居住の自由を制限されたことによるものではないし、右使用の制約による損害を一定の限度で観念し得ることは前述のとおりであり、右主張は採用し難い。

5  このようにみてくると、平成四年の違法な使用禁止命令によって、本件各工作物の所有者、占有者であった原告反対同盟、同P1、同P2、同P7、同P3、同P4、同P8、同P5、同P6が精神的な損害を被ったことは明らかであるところ、右4に述べたような諸事情を総合考慮すれば、それに対する慰藉料は、原告反対同盟については二〇万円、その余の右原告らについては、原告一名当たり一〇万円とするのが相当である。

八  平成五年の使用禁止命令の適法性について

1  証拠(乙三二四の1ないし25)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件各工作物の外観等の変化

本件各工作物の構造及び外観等は、平成四年の使用禁止命令が発せられた後は変化がなかった。

(二) 本件各工作物の常駐者、出入者等

(1) 新労農合宿所には平成五年六月二九日現在、第四インターに所属するP1、P2及びプロ青同に所属するP7の三名が新労農合宿所所在地に住民登録を行っており、平成四年九月一九日から平成五年六月三〇日までの間に右三名を含め、第四インター五名、プロ青同四名、統一共産同一名等の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一五名の出入りが確認されているところ、このうち四名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の右各セクト所属者等が同時に四回確認されている。

(2) インターκ団結小屋には、平成五年六月二九日現在、P4、P3のいずれも第四インターに所属する二名がその所在地に住民登録を有し、かつ、常駐しており、平成四年九月一九日から平成五年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、第四インター四名、プロ青同一名の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計七名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にインターκ団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に三回確認されている。

(3) プロ青同団結小屋には、平成四年九月一九日から平成五年六月三〇日までの間に、プロ青同三名、第四インター一名の各セクトに所属する者計四名の出入りが確認されているところ、このうち三名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有する。

(4) 統一共産同団結小屋には、平成五年五月現在、統一共産同に所属するP6、P15の常駐が認められており、平成四年九月一九日から平成五年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、統一共産同二名、第四インター二名の各セクトに所属する者計四名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争での検挙歴を有するとともに、右期間内に統一共産同団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に一回確認されている。

(三) 各セクトの活動及び意思表明の状況

(1) 第四インター(乙三二四の5別添疎明資料1、2)

第四インターは、その機関紙である「世界革命」において、「力の対決は終わったのか …この数年間の最も典型的な強権発動であった治安法の矛先は、わがκ部落に突きつけられたままである。力の対決の時代は終わった、とは皮膚感覚のレベルで実感できない。国は二期計画をあきらめた訳ではないし、闘争はまだまだ続く。」(平成五年六月七日付け第一二九三号)、「事業認定がついに失効 二期を断念させるまで闘おう …空港問題を解決するための解答はまず二期工事計画を完全に断念することからしか始まらない。現在の二期工事計画書の図面が文字通り〝白紙〟になるまで闘いは続いていく。」(平成五年六月二八日付け第一二九六号)等の意思表明を行った。

(2) プロ青同(乙三二四の5別添疎明資料3ないし5)

プロ青同は、その機関紙である「統一」において、「声明 …政府・空港公団は二十六年間にわたって、田や畑を破壊し、人間や人の関係を破壊し、地域の文化と風景をも破壊しつづけてきました。管制塔占拠闘争はそれを許さない戦いであり、彼らに比すればほんのささいな破壊活動にすぎません。」(平成四年九月三〇日付け第四〇〇号)、「10・25θ集会へ! 行政当局の『反省』 …過去を反省したからといって、空港二期工事の現状を追認させ、更には次の二本の滑走路の完成までも容認させられるものではない。私たちは、空港の完成を認めるわけにはいかない。」(平成四年一〇月一二日付け第四〇一号)、「公開シンポの結果についての我々の評価 …θ闘争は強制収用の放棄・事業認定失効という新しい局面において、二期断念を政府に認めさせるまでたたかいぬかなければならばならない。…われわれは二期断念を勝ち取るまで、反対同盟とともに闘いつづけることを改めて表明する。」(平成五年六月一四日付け第四一六号)等の意思表明を行った。

(3) 統一共産同(乙三二四の22、同23別添疎明資料1、2)

統一共産同は、その機関紙である「現代革命」において、「侵略拠点化、二期阻止の陣型を …われわれは用地内農民・住民と連帯し闘い続ける。」(平成五年四月二三日付け第一九〇号)、「買収(『話し合い』)拒否する用地内農民と連帯し、自力自闘で横風用滑走路・二期放棄に追い込もう! ―大衆的実力闘争の再構築をめざそう― …われわれはすべての用地内農民の買収(話し合い)拒否の闘いに連帯し、二期を阻止する大衆的実力闘争の再構築をあくまでめざすであろう。」(平成五年五月三一日付け第一九一号)等の意思表明を行い、また、統一共産同に所属するP27は、平成四年一〇月二五日現地集会において、「我々の仲間が山形国体で発煙筒を投げ、国会では靴を投げたが、我々は、θでやることがないのでこのようなことをしたのではない。靴や発煙筒よりも火炎ビンが似合うθ闘争であるが、今後、このような闘争ができるθに結集できるよう努力していきたい。」(乙三二四の22)等の発言を行った。

(四) なお、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトが、平成四年の使用禁止命令発出後、本法の暴力主義的破壊活動等に該当する行為やそれにつながるような違法行為、あるいは新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を行った事実は認められない。

2  前記七の2のように、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者は、いずれも、平成四年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったとはいえず、暴力主義的破壊活動者に該当しないというべきところ、その後の右各セクトの活動状況も、暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような違法行為はもちろん、新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を行った事実も認められないこと、そして、その機関紙における意思表明状況も、依然、国や空港公団との対決姿勢を明確にしてはいるものの、実力行使を強調する度合いはさらに薄らぎ、暴力主義的破壊活動等の容認に結び付くような意思表明も一段と少なくなっている上、このような意思表明のほかには、前記各セクトが新空港の二期工事等に関し、現実に暴力主義的破壊活動等やそれにつながるような違法行為の実行に至ることを窺わせるような具体的徴憑も見当たらないことなどからすれば、右三セクトに所属する者が、その後も、違法な実力行使の放棄など、過去の暴力主義的破壊活動等からの決別及び運動方針の転換を対外的に明確にした事実は認められないことを考慮しても、右各セクトに所属する者が、平成五年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったとはいえないと考えられるから、これらの者は、暴力主義的破壊活動者に該当しないというべきである。

そうすると、右三セクトに所属する者が平成五年当時においても、本件各工作物に出入りし、また、相互にある程度の交流があったことは前記1認定のとおりであるけれども、これらの事実をもって、本件各工作物が、多数の暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者の集合の用に現に供され、又は供される蓋然性が高いとはいえないから、平成五年の使用禁止命令は、その発出の要件を欠いたものといわなければならない。

3  したがって、平成五年の使用禁止命令は、違法といわざるを得ないところ、右違法な使用禁止命令の発出について、その命令権者であった運輸大臣に過失があったと認められることは、前記七の3と同様であり、被告は、右使用禁止命令を受けたことによって、本件各工作物の所有者及び管理者兼占有者が被った損害を賠償する責任がある。

4  本法に基づく使用禁止命令によって、当該工作物の所有者、占有者らが損害を被ると認められること、その点に関する被告の主張が採用し難いことは、前記七の4のとおりである。

5  したがって、平成五年の違法な使用禁止命令によって、本件各工作物の所有者、占有者であった原告反対同盟、同P1、同P2、同P3、同P4、同P5、同P6が精神的な損害を被ったことは明らかであるところ、前記七の2に述べたような諸事情からすれば、それに対する慰藉料は、原告反対同盟については、二〇万円、その余の右原告らについては、原告一名当たり一〇万円とするのが相当である。

九  平成六年の使用禁止命令の適法性について

1  証拠(乙三二八の2ないし24)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件各工作物の構造等の変化(乙三二八の3、4、9、10、15、16、20、21)

本件各工作物の構造及び外観等は、平成元年一月二五日に設置された統一共産同団結小屋の孟宗竹製の櫓が、平成六年二月二二日、強風のため一部倒壊し、同月二三日に撤去されたほかは、平成五年の使用禁止命令が発せられた後に変化がなかった。

(二) 本件各工作物の常駐者、出入者等

(1) 新労農合宿所には、平成六年七月五日現在、日本革命的共産主義者同盟(旧第四インター日本支部、以下「旧第四インター」という。)に所属するP1、P2の二名がその所在地に住民登録を行っており、平成五年九月一九日から平成六年六月三〇日までの間に右二名を含め、旧第四インター五名、プロ青同三名、統一共産同二名等の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一六名の出入りが確認されているところ、このうち三名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の右各セクト所属者等が同時に八回確認されている。

(2) インターκ団結小屋には、平成六年七月五日現在、P4、P3のいずれも旧第四インターに所属する二名がインターκ団結小屋所在地に住民登録を有し、かつ、常駐しているところ、平成五年九月一九日から平成六年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、旧第四インター三名、プロ青同一名の各セクトに所属する者計四名の出入りが確認されており、また右期間内に同団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に二回確認されている。

(3) プロ青同団結小屋には、平成五年九月一九日から平成六年六月三〇日までの間に、プロ青同に所属する四名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内にプロ青同団結小屋で二人以上の右セクト所属者等が同時に二回確認されている。

(4) 統一共産同団結小屋には、平成六年七月五日現在、統一共産同に所属するP6が統一共産同団結小屋所在地に住民登録を行っており、平成五年九月一九日から平成六年六月三〇日までの間に右者を含め、統一共産同に所属する者二名及びこれらの者と行動を共にする者計三名の出入りが確認されているところ、このうち一名が新空港反対闘争での検挙歴を有している。

(三) 各セクトの活動及び意思表明の状況

(1) 旧第四インター(乙三二八の5別添疎明資料1ないし3)

旧第四インターは、その機関紙である「世界革命」において、「θ現闘日誌 …われわれは、強制収用攻撃から二期完成攻撃へと移行した闘いの焦点をしっかりとらえて、攻勢的な闘いの構築を急がなければなるまい。」(平成六年二月七日付け第一三二六号)、「θ現闘日誌 …運輸省や空港公団の『自壊』に一喜一憂したり、幻想を持ったりするのは他に任せておいて、ここはひとつ、敵の弱い環の露呈・攻めどころのポイントが見えたぐらいに考えておいて、闘いの姿勢は堅持しておきたい。」(平成六年四月一一日付け第一三三五号)、「第三次モザンビーク派兵を糾弾しθ現地行動 …θ空港粉砕・二期阻止の闘いと共にθ軍事空港化を阻止していく闘いを作り出していこう。」(平成六年六月二〇日付け第一三四四号)等の意思表明を行った。

(2) 統一共産同(乙三二八の22別添疎明資料1、2)

統一共産同は、その機関紙である「現代革命」において、「隅谷調査団長による二期策動を許すな! …われわれは買収を拒み、用地内に住み、生産し続けていこうと固く決意している用地内農民、地権者、そして用地内農民と連帯し、励まし続けている反対同盟農民と共に、敵権力・公団の二期推進策動を粉砕しなければならない。…『成田治安法』適用の目的は二期工事を完成させることにある。敵の二期完成に向けた一切の策動を粉砕し、闘い抜こう!」(平成五年一〇月七日付け第一九三号)、「θを反派兵闘争の運動拠点へ! …θに結集し、農民と共に闘ってきた主体の中で、侵略空港粉砕の戦線を再構築し、θを全国の反戦、反派兵の闘いの拠点の一つとして強化し仲間の結集を呼びかけていかなければならない。…第二、第三の国名をヤグラに掲げないように自衛隊派兵阻止、θ空港粉砕を結合させて闘おう。」(平成六年一月八日付け第一九五号)等の意思表明を行った。

(四) なお、旧第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトが、平成五年の使用禁止命令発出後、本法の暴力主義的破壊活動等に該当する行為やそれにつながるような違法行為、あるいは新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を行った事実は認められない。

2  前記八の2のように、第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者は、いずれも、平成五年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったとはいえず、暴力主義的破壊活動者に該当しないというべきところ、その後の右各セクトの活動状況も、暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような違法行為はもちろん、新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を行った事実も認められないこと、そして、その機関紙における意思表明状況も、旧第四インター及び統一共産同は、依然、国や空港公団との対決姿勢を明確にしてはいるものの、実力行使を強調する度合いはさらに薄らぎ、暴力主義的破壊活動等の容認に結び付くような意思表明もほとんどなくなっている上、プロ青同については、平成六年当時、その機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関連する意思表明を行った事実は全く認められないこと、そして、旧第四インター及び統一共産同の右意思表明のほかには、前記各セクトが新空港の二期工事等に関し、現実に暴力主義的破壊活動等やそれにつながるような違法行為の実行に至ることを窺わせるような具体的徴憑も見当たらないことなどからすれば、右三セクトに所属する者が、その後も、違法な実力行使の放棄など、過去の暴力主義的破壊活動等からの決別及び運動方針の転換を対外的に明確にした事実は認められないことを考慮しても、右各セクトに所属する者が、平成六年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったとはいえないと考えられるから、これらの者は、暴力主義的破壊活動者に該当しないというべきである。

そうすると、右三セクトに所属する者が平成六年当時においても、本件各工作物に出入りし、また、相互にある程度の交流があったことは前記1認定のとおりであるけれども、これらの事実をもって、本件各工作物が、多数の暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者の集合の用に現に供され、又は供される蓋然性が高いとはいえないから、平成六年の使用禁止命令は、その発出の要件を欠いたものといわなければならない。

3  したがって、平成六年の使用禁止命令は、違法といわざるを得ないところ、右違法な使用禁止命令の発出について、その命令権者であった運輸大臣に過失があったと認められることは、前記七の3と同様であり、被告は、右使用禁止命令を受けたことによって、本件各工作物の所有者及び管理者兼占有者が被った損害を賠償する責任がある。

4  本法に基づく使用禁止命令によって、当該工作物の所有者、占有者らが損害を被ると認められること、その点に関する被告の主張が採用し難いことは、前記七の4のとおりである。

5  したがって、平成六年の違法な使用禁止命令によって、本件各工作物の所有者、占有者であった原告反対同盟、同P1、同P2、同P3、同P4、同P5、同P6が精神的な損害を被ったことは明らかであるところ、前記七の2に述べたような諸事情からすれば、それに対する慰藉料は、原告反対同盟については、二〇万円、その余の右原告らについては、原告一名当たり一〇万円とするのが相当である。

一〇  平成七年の使用禁止命令の適法性について

1  証拠(乙三四二、三四三、三四四の1ないし24)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件各工作物の構造等の変化

本件各工作物の構造及び外観等は、平成六年の使用禁止命令が発せられた後は変化がない。

(二) 本件各工作物の常駐者、出入者等

(1) 新労農合宿所には、平成六年六月二二日現在、旧第四インターに所属するP1、P2の二名がその所在地に住民登録を行っており、平成六年九月一九日から平成七年六月二七日までの間に右二名を含め、旧第四インター四名、プロ青同二名、統一共産同一名等の各セクトに所属する者及びこれらの者と行動を共にする者計一一名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に新労農合宿所で二人以上の右各セクト所属者等が同時に五回確認されている。

(2) インターκ団結小屋には、平成七年六月二二日現在、P4、P3のいずれも旧第四インターに所属する二名がその所在地に住民登録を有し、かつ、常駐しており、平成六年九月一九日から平成七年六月三〇日までの間に右常駐者を含め、旧第四インター五名、プロ青同二名の各セクトに所属する者計七名の出入りが確認されているところ、このうち二名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間内に同団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に二回確認されている。

(3) プロ青同団結小屋には、平成六年九月一九日から平成七年六月三〇日までの間に、プロ青同に所属する二名の出入りが確認されているところ、このうち一名が新空港反対闘争関連事件での検挙歴を有するとともに、右期間にプロ青同団結小屋で二人以上の右セクト所属者等が同時に一回確認されている。

(4) 統一共産同団結小屋には、平成七年六月二二日現在、統一共産同に所属するP6が統一共産同団結小屋所在地に住民登録を有し、平成六年九月一九日から平成七年六月三〇日までの間に右の者を含め、統一共産同に所属する者二名及び旧第四インターに所属する者一名の各セクトに所属する者計三名の出入りが確認されているところ、このうち一名が新空港反対闘争での検挙歴を有するとともに、右期間内に同団結小屋で二人以上の右各セクト所属者等が同時に一回確認されている。

(三) 各セクトの活動及び意思表明の状況

(1) 旧第四インター

旧第四インターは、その機関紙である「世界革命」において、「再開する厳しい攻防局面 …θ闘争は、新たな対決の時を迎えつつあると言えよう。〝平和〟を貴重とした〝話し合い〟の形をとった攻防から、鋭い対決にむけた攻防に移りつつあるのが、現在のθだ。時代的に言えば、強制収用の開始となった一九六九年十二月以前の、任意の買収攻撃を基調とした対決と攻防の状況に近くなるのかも知れない。」(平成六年一〇月一七日付け第一三五九号、乙三四四の5別添資料1)、「政府はB・C滑走路建設を断念せよ! 円卓会議の終結と開始された新たな攻防局面 …平行滑走路・横風滑走路の建設を阻む闘いは、さらに重大な局面に突入している。」(平成六年一〇月二四日付け第一三六〇号、乙三四二)等の意思表明を行った。

(2) 統一共産同(乙三四四の22別紙1ないし4)

統一共産同は、その機関紙である「現代革命」において、「横風用滑走路〝凍結〟の欺瞞! …我々労働者階級は二期阻止を闘い抜き、現空港の侵略性を徹底的に暴露・批判しなければならない。θ空港からの自衛隊派兵を許さず、軍事空港化を粉砕しよう!…敵の分断攻撃を粉砕し二期阻止・空港廃港が原則である。」(平成六年九月一九日付け第二〇二号)、「隅谷調査団の『所見』弾劾! …BC用地の分断、用地内外の分断を許さず、派の違いを問わず用地内で闘い続ける農民と連帯し、全ての二期阻止を貫く農民、地権者と共に闘い抜こう。」(平成六年一〇月二七日付け第二〇三号)、「用地内〝λ〟ねらう芝山鉄道延伸策動を許すな! …新たな決意をもって労働者の中に空港粉砕・二期阻止の闘いを構築し、反対同盟・用地内農民に連帯しよう。」(平成七年一月一日付け第二〇五号)、「『共生』幻想打ち砕け! …われわれが『国際空港』に反対する、なかんずく二期工事粉砕を訴える根拠は、政府の『一方的な空港づくり』(一月二十日付運輸相亀井静香の『反対運動に係わられた農民の皆様へ』という手紙)の不当性や既成事実の重圧による叩きだし攻撃の非人間性のみではない。この間の成田空港の自衛隊派兵拠点化に典型的な帝国主義日本国家の『国際貢献』のための出撃拠点そのものに反対しなければならない。そして、その政治的内容を徹底的に暴露・弾劾しぬかねばならない。」(平成七年二月一日付け第二〇六号)、「官民共同出資の芝山鉄道による用地買収策動を許すな! …運輸省―公団のλ住民追い出しの卑劣な策動を断固粉砕しなければならない。」(平成七年九月一八日付け第二一二号、乙三四三)等の意思表明を行った。

(四) なお、旧第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトが、平成六年の使用禁止命令発出後、本法の暴力主義的破壊活動等に該当する行為あるいはそれにつながるような違法行為、あるいは新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を行った事実は認められない。

2  前記九の2のように、旧第四インター、プロ青同及び統一共産同の各セクトに所属する者は、いずれも、平成六年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったとはいえず、暴力主義的破壊活動者に該当しないというべきところ、その後の右各セクトの活動状況も、暴力主義的破壊活動等あるいはそれにつながるような違法行為はもちろん、新空港の二期工事等に関する違法な実力行使を行った事実も認められないこと、そして、その機関紙における意思表明状況も、旧第四インター及び統一共産同は、依然、国や空港公団との対決姿勢を明確にしてはいるものの、実力行使を強調する度合いはさらに薄らぎ、暴力主義的破壊活動等の容認に結び付くような意思表明もほとんどみられなくなっている上、プロ青同については、平成六年以降、その機関紙において、暴力主義的破壊活動等に関連する意思表明を行った事実は全く認められないこと、そして、旧第四インター及び統一共産同の右意思表明のほかには、前記各セクトが新空港の二期工事等に関し、現実に暴力主義的破壊活動等やそれにつながるような違法行為の実行に至ることを窺わせるような具体的徴憑も見当たらないことなどからすれば、右三セクトに所属する者が、その後も、違法な実力行使の放棄など、過去の暴力主義的破壊活動等からの決別及び運動方針の転換を対外的に明確にした事実は認められないことを考慮しても、右各セクトに所属する者が、平成七年当時、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高かったとはいえないと考えられるから、これらの者は、暴力主義的破壊活動者に該当しないというべきである。

そうすると、右三セクトに所属する者が平成七年当時においても、本件各工作物に出入りし、また、相互にある程度の交流があったことは前記1認定のとおりであるけれども、これらの事実をもって、本件各工作物が、多数の暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の高い者の集合の用に現に供され、又は供される蓋然性が高いとはいえないから、平成七年の使用禁止命令は、その発出の要件を欠いたものといわなければならない。

3  したがって、平成七年の使用禁止命令は、違法といわざるを得ないところ、右違法な使用禁止命令の発出について、その命令権者であった運輸大臣に過失があったと認められることは、前記七の3と同様であり、被告は、右使用禁止命令を受けたことによって、本件各工作物の所有者及び管理者兼占有者が被った損害を賠償する責任がある。

4  本法に基づく使用禁止命令によって、当該工作物の所有者、占有者らが損害を被ると認められること、その点に関する被告の主張が採用し難いことは、前記七の4のとおりである。

5  したがって、平成七年の違法な使用禁止命令によって、本件各工作物の所有者、占有者であった原告反対同盟、同P1、同P2、同P3、同P4、同P5、同P6が精神的な損害を被ったことは明らかであるところ、前記七の2に述べたような諸事情からすれば、それに対する慰藉料は、原告反対同盟については、二〇万円、その余の右原告らについては、原告一名当たり一〇万円とするのが相当である。

第四結論

よって、AないしC事件については、各原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、DないしG事件の各原告らの請求は、前記七ないし一〇の各5の金員及びこれに対する各不法行為の日(各使用禁止命令発出の日)から支払済みまで民法所定の年五分の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。なお、仮執行宣言については、相当でないから、これを付さない。

(裁判長裁判官 及川憲夫 裁判官 瀬木比呂志 裁判官 澁谷勝海)

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